また、平成22年5月に発生が確認された宮崎県の口蹄疫は、日本の畜産の問題点を露呈することとなりました。
大規模化と集約化、海外と違い、農家の耕作面積が少ない日本では一定の場所に大規模化した畜産経営が多く存在します。宮崎県もその1つで小さな地域で畜産業が密集しており、その地域の一大産業となっていたのですが、逆にそのことが、28万頭(内大家畜約3万頭)ものたくさんの尊い命を奪うことになったのです。
日本の肉用牛業界は、全農系列、商系、安愚楽牧場の3つの大きな勢力が競って頭数を増加させてきました。結果的には安愚楽牧場は倒産し、残ったのは4,000億の巨額な負債とエサを与えられないで処分されるのを待っている牛たちです。
はたして日本の高級志向を目指す和牛肥育において大規模化は必要なのでしょうか?
また、平成23年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う福島原発事故は、近隣の畜産農家の離農と汚染ワラの流通による牛肉の出荷停止、風評被害による東北・関東一帯での牛肉価格の下落を引き起こしました。
その上、牛肉消費に影響のある海外観光客の減少も価格下落に拍車をかけました。
現在、食肉センターで放射能検査を実施していますが、1日での検査頭数の限界などもあり、なかなか販売価格が上向いていません。
なお、原発による被害は牛肉の海外輸出にも影響がでています。年間最大300トンを海外(特に香港)に輸出していましたが、事故以降、各国は輸入禁止措置(実質輸入を止めている国もあります)を取っていませんが、輸出量は激減しました。日本の農畜産物に対する安全性評価が低下したからです。
(http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2011-07/12/content_22975207.htm)
TPP推進派は、競争力に強い農業の一環として農畜産物の輸出促進をあげていますが、諸外国では、チェルノブイリ事故であんなに拡散した放射能汚染が、小さな島国の日本で、全域に広がっていない事が不思議だと思われているのです。一度世界地図を見ていただければわかりますよね。
このようなフクシマの問題については、先生が色々活動しておりますので、これぐらいにしておきますが、強い農業を目指すには、日本の農畜産物は安全だと丁寧な説明が必要ではないでしょうか。(つづく)
辛辣コラムニスト 津田 正一郎