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「緊急コラム 「幸せな牛飼いを目指して(1)」 (TPP関連)」

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2011年12月17日

 今回、松本先生より原稿の依頼があり、TPPに関して寄稿しようと考えました。
 この11月からの1か月間で慎重派、推進派入り乱れて様々な意見が飛び交いましたが、国民には何の説明もなく議論もないまま、政府はTPPへの交渉参加に踏み切りました。
 色々な点でTPPへの推進については疑問が残るところですが、一旦政府が舵を切ったものは、簡単には戻すことはできないでしょう。もう既に、交渉参加の事前協議で米国牛肉輸入の規制緩和が取り沙汰されているなど、前途多難な交渉が待ち受けていることは間違いありません。
 そのような中、今回は、日本の畜産(肉用牛)の抱える課題などを踏まえながら先生のメインテーマでもある幸せな牛飼いについて考えていきたいと思います。
 さて、牛肉は、平成2年に輸入自由化され、左表のように当初全体の牛肉出回量のうち国産牛肉の割合は51%でしたが、あれから20年口蹄疫が発生した平成22年では国産割合は42%までに減少しました。
 数量を見ていただいてわかるのですが、389千トンから31千トン減の358千トンと約8%の減少となっています。関税率は70%から随時減少され現在は38.5%まで減少しています。
 このような中、畜産農家は、輸入牛肉との差別化を図るため、ブランド化で対抗し、たくさんの和牛ブランドが創生されました。国内生産の約80%以上が和牛を生産しており、自由化以降、国内の生産体制は和牛にシフトしたことが伺えますが、自由化当時221千戸在った肉用牛農家が74千戸までに減少し、子牛安定基金制度やマルキン制度などの価格安定制度により存続している経営が実態で、他に借金を清算し、廃業できたらよい方で、借金返済の目途もなく他に選択の余地がないので経営を継続している農家もあると聞いています。(つづく)

 辛辣コラムニスト 津田 正一郎

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