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松本大策のコラム
質問箱から(その15)~クロストリジウム感染症について~

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2018年2月2日

◎ご質問・ご相談コーナーへご投稿をいただいた質問と回答の内容をご紹介いたします。

ご相談内容

 肥育中期の交雑種牛がクロストリジウム感染症で相次いで数頭が死亡する事例に遭遇しました。
同時期の発生牛群では血中のビタミンAレベルは30IU/ml前後、βカロテンも20μg/mlと欠乏値を示していましたが、因果関係はあるのでしょうか?

回答

 まず、クロストリジウム症(悪性水腫)を防ぐには、嫌気性3種混合ワクチンやキャトルウィン−Cl5というワクチンがあります。コストはかかりますが、農場の大きさと死亡牛の機会損失を比較して、接種を検討してはいかがでしょう。

 さて、ご質問にたいしてですが、ビタミンAと亜鉛は、腸粘膜に限らずすべての表面の細胞(上皮細胞といいます)を護る働きがあります。また、ビタミンAが不足すると、免疫が低下したり、肝臓がクロストリジウムの出す毒素を分解する力が低下したりします。僕の見ている農場でも、血便や悪性水腫の多発するケ-スでは、ビタミンAと亜鉛が不足しているケ-スは多いです。

 熟考した対策よりも一刻も早い対策が必要でしょうから、とりあえずア-スジェネタ-を10g/頭の全頭連続給与と、17ヶ月齢以降の牛さんにル-サンペレットを100g/頭×5日間とドン八ヶ岳T1を50g/頭×10日間与えてはいかがでしょうか。これまでの血検結果では、血中ビタミンA濃度にはさほど変化はありませんが、クロストリジウム症の続発を防ぐ効果があります。
(その後のビタミンA投与試験「一人の管理者の元で、同じ飼料、同じ牛舎で、約1,000頭のうち100頭に、肥育導入から毎月100万単位のビタミンA皮下注射を出荷まで続けた試験」では、ビタミンA投与は全く脂肪交雑に影響を及ぼさない、という結果が出ました。)

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