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ゲストのコラム
「食の在り方 (第八話)」

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2011年9月13日

〜 本当の飢饉とは? 〜

 読者の皆さんに於かれては、3.11を通じて多くの教訓を得られたことかと思います。直接被災しなかった者としておこがましいのですが、残念なのは、歴史を学びその過去の教訓が確りと伝承されていたならば、あそこまでの大きな被害に繋がらなかったのではなかったのではないか、ということ。私自身も恥ずかしながら、かつて10mを超える津波の存在を聞いていたものの、自らの実感としてとても信じられるものではありませんでした。

 同じことが、今回のテーマ「本当の飢饉とは?」でも言えるのではないでしょうか。今から170年ほど前に発生し7年間も続いた、江戸の三大飢饉のひとつ「天保の大飢饉」。全国で数十万人もの尊い命が失われたと言われています。特に今でいう東北地方。1ヶ月間降り続く長雨による大洪水や冷害により深刻な不作に。収穫量が激減、食料が殆ど採れず危機的な状況に。飢餓が酷い地域では家畜犬猫を取り尽くすと死人はおろか生きている人間までも殺してその肉を食べたという記録が残る、まさに生き地獄。栄養失調の人たちが国中に溢れ、さらに疫病が蔓延。死体は身元を確認することなく野山に埋葬。間もなく狼に掘り出され食いちぎられた、、、俄かに信じられる状況ではありません。

 この「天保の大飢饉」において、かつて上杉鷹山公が藩主を務めた米沢藩は充分な食料を「備蓄」していたため一人の死者も出さなかったようです。その50年ほど前に発生した、火山の噴火が原因となった「天明の大飢饉」に教訓を得て藩をあげて食料備蓄などに励んだお陰でしょうか。今は、大変便利で効率的な世の中になりました。但しエネルギー、水、交通・物流といったライフライン(=命綱)についても、意外と脆いものだと認知しておく必要があると思います。不安を煽るつもりはありませんが、私たち夫婦は飢饉に関するこうした史実から考えても、「食を護る」ことに強い関心を持つようになりました。大雨、地震、火山噴火や冷風雪害など、私たちの手ではどうにも止められるものではありません。

 天災は忘れた頃にやってくるもの。こうした歴史を踏まえ、次回は前回触れられた「子供たちの未来の食料組合」での生産販売の仕組みとして、一体どんなことが考えられるか、皆さんも一緒に考えてみませんか?
(つづく)

 木原 茂明

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