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ゲストのコラム
「牛飼いの嫁より愛をこめて (最終回)」

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2011年7月19日

牛と児童文学その2

 犬や猫が愛玩動物であるのに対し、牛は、家畜です。どんなに家族同様に愛情を注いでも、最後には人に食べられる存在です。「食べる」という根源的な行為に結びつく存在として、児童文学キャラとしての重要な意味があると思います。

 一口に牛といっても、頭の良い牛、どうしようもない牛、やさしい牛、気の荒い牛、果てはりっぱな牛格のある牛まで様々です。牛との暮らしでは、何度も生き死にに出会います。一見のんびりしているような牛たちですが、命はもろいけれど、同時にしたたかで粘り強いことを、私に教えてくれます。

 農業のような、地に足をつけた暮らしというのは、命の営みを体を通して知るということではないかと思います。今の子どもたちは(もしかしたら、大人も!)農業と食べることの現場から、あまりに遠いところにいて、寄るべき実感が乏しいのではないでしょうか。

 本を読むことは、主人公と一緒に疑似体験をすること。だからこそ、農の現場を描いた本を通して、子どもたちに現場の感覚を伝えたいと思っています。

 私の2冊目の本「チョコレートと青い空」の主人公も、和牛肥育の専業農家の二男坊、周二です。ガーナからやってきた研修生のエリックさんの存在によって、チョコレートの真実を知り、思春期の兄とのぎくしゃくしていた関係が変化していきます。

 フェアトレード、農業問題、世界の貧富の差、そしてどこにでもある家族の問題と、多くのテーマを盛り込みました。

 児童文学は大人が読んでもとても面白いものです。最後にお勧めの牛の本をいくつかご紹介。「山にいく牛:川村たかし」「君の家にも牛がいる:小森香折」「おどる牛:八島重子」「3年2組は牛を飼います:木村セツ子」「酪農家族:立松和平」、コミックの「百姓貴族:荒川弘」は抱腹絶倒です。「ぼくらは闘牛小学生;堀米薫」もぜひお楽しみに!

 これからも、牛歩の歩みで、牛の児童文学を書いていきたいと思います。連載を読んでいただき、ありがとうございました。(おわり)

堀米 薫
HP: 牛飼い&米作り 百姓 堀米の部屋
絵本: チョコレートと青い空

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