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「牛飼いの嫁より愛をこめて (第5話)」

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2011年7月12日

牛と児童文学その1

 文章を書くようになったきっかけは、15年前、夫から誕生日のプレゼントにもらった、ピンクのリボン付きのワープロです。「これで、毎月の通信を書いてくれ」という業務用だったのですが、勢いづいて童話やエッセイも書くようになりました。

 自分が文章を書き始めた時に、農業と自然をテーマにすえると決めておきました。文章は、書く人間そのものを現してしまいます。同人や作家協会で出会った先生方にも、「あなたは、牛の世界を書けばいい」とすすめられました。才能のない私には、身の丈以上の事は書けません。自分が牛に教えてもらったこと、農業の中で学んだこと、自然の中で感動したことを、素直に書いていこうと思いました。

 ずっと短い文章ばかり書いていましたが、児童文学者の故後藤竜二先生の主催する同人誌「季節風」と出会った時、「自分に必要なのはこれだ!」と直感しました。同人にもまれながら、リアリズムの児童文学を書くことを学びました。

 単行本のデビューは2009年、「牛太郎、ぼくもやったるぜ!」(佼成出版社)です。日本児童文芸家協会のコンクールで入賞し、出版に結びつきました。

 物語の主人公は、和牛肥育農家の小学4年生、山中健太郎。牛のお産に立ち会ったことから、生まれた子牛(メスですが)に「牛太郎」という名前を付けます。乳離れした牛太郎は、角突きによる順位付けで仲間の牛に負けてしまいます。同じころ、健太郎も、同級生にいじめを受けて心が沈んでいました。牛太郎が強くなっていく姿を通して、健太郎も成長していくお話です。

 実際に牛たちを見ていると、強い牛が弱い牛の餌を横取りするなど、いじめのようなこともあります。飼い主は牛たちの関係に目を配り、ボスとして統率しなければなりません。これは、人間の世界にも、そっくり当てはまることに思えました。

 「牛太郎、ぼくもやったるぜ!」は、長野県と栃木県の課題図書に選定されました。

 絵本や児童書の愛され動物キャラと言えば、イヌヤネコ、森のくまさん、キツネ、ウサギにネズミさんでしょう。

 牛は、はたして児童文学の中の重要キャラになれるのか?

 はい、私は、なれると思います!(つづく)

堀米 薫
HP: 牛飼い&米作り 百姓 堀米の部屋
絵本: チョコレートと青い空

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