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ゲストのコラム
「農業コンサルタント奮闘記」

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2011年5月31日

− 第9回 −

 これまで、農業経営における「土づくり」に対する考え方について私の意見を書いてきました。農家は一生懸命に土づくりに励み、美味しい農産物をたくさん収穫します。そして10年後も50年後も農地が農地でありつづけるために、その生産性を高く維持するよう日々、励んでいるはずです。

 この土づくりは、いったい誰のためなのかというと、実は未来の子供たちの為だと思うのです。農業は生命や暮らし、コミュニティを維持していくための最も基礎的なインフラです。だからこそ、未来のために投資しなければなりません。

 農業に対して短期的な投資効果を得ようと思えば、化学肥料を多用して土壌から地力を収奪することです。でも、それではマネーゲームで言うところの「売り抜け」です。残るのは痩せ地だけです。そうならないように、農地に対して長期的な投資をしようというが土づくりです。リターンを得るのはずっと先のこと、子供や孫の世代です。

 となると、これは農家だけに責任を押し付けるわけにはいきません。わたしたち生活者みんなが、未来のために「農」に関心を持って、できれば、わずかでも投資をして「食卓」との畑や田んぼ、牧場との距離感を縮めていくような活動が必要です。

 そういう思いから、私は仲間たちと「The Earth Cafe Project」という取り組みを行っています。農業を消費者と生産者という二極化した構図でとらえるのではく、「生消一体化」して農業を考えようという取り組みです。でも、考えるのは疲れるので、考える前に農を実感しようという企画「アースカフェ」が思った以上に参加者からの反響がありました。アースカフェはみんなで農場に行き、そこで時間を過ごすという極めて単純な大人の遠足です。でも、農場に行くと、普段の都会の生活で忘れかけていた何かが目覚めるんです。やっぱり人は土から離れては生きていけないのです。忙しい都会の暮らしの中でも大地の息づかいを感じらえる感性が現代人には必要だと思います。このプロジェクトでつくったブックレットには、写真家の星野道夫さんの言葉を引用しています。

「あわただしい、人間の日々の営みと並行して、
 もうひとつの時間が流れていることを、
 いつも心に感じていたい。」

(つづく)

株式会社リープス 鈴木 善人
http://www.leaps.jp/

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