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ゲストのコラム
「農業コンサルタント奮闘記」

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2011年5月24日

− 第8回 −

 土の中に地力の源となる腐植物質を増やすためには、その原料となる有機物を土の中に供給しなければなりません。それが堆肥です。堆肥にもいろいろなものがあります。原料の違い、成分の違い、完熟したものと未熟なものなどがあります。基本的には完熟堆肥を投入するのが土づくりには有効です。未熟な堆肥には無機態の栄養素が多く含まれていて、即効性の肥料としても使えますが、同時に植物の成長を阻害する物質も多く含まれていて使い方には注意が必要です。

 堆肥の原料で最も多いのが家畜の排せつ物です。かつては、どこの農家でも労働力として牛や馬を飼っていて、畜舎から出てくるきゅう肥を積んで堆肥をつくっていました。つまり肥料を自給していたのです。しかし、農業技術が近代化して、労働力は機械に、堆肥は化学肥料に置き換えられました。畑作農家で家畜を飼う必要がなくなり、農家からきゅう肥が発生しなくなったのです。耕種農家と畜種農家がそれぞれ専業化し、家畜排せつ物が畜種農家に偏在しています。耕種、畜種が地理的に近ければ、敷料の麦稈や稲わらときゅう肥を交換するなどできますが、そうでない場合は畜種農家に家畜排せつ物がたまっていって、悪臭や水質汚濁などの畜産公害を引き起こすことも多くなってきました。

 最近では耕畜連携などという言葉をよく聞くようになってきました。耕種農家と畜種農家で仲良く家畜排せつ物を融通しあって、地力の工場と畜産公害をなくしましょうという取り組みです。しかし、ここで問題があります。堆肥の品質を耕畜それぞれの立場でどのように評価するかということです。どちらで堆肥化するのか、どの程度の品質(熟度)で取引をするのか、取引価格や輸送手段、輸送時期をどうするのかなど、あらかじめ、しっかりと決めておかないとトラブルの原因にもなります。堆肥に何を期待して、どのように使いこなすか。技術的なことはもとより、土づくりのポリシーにも関わる大事なことです。
(写真:コンサル先での堆肥化試験の様子)
(つづく)

株式会社リープス 鈴木 善人
http://www.leaps.jp/

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