− 第7回 −
「土づくりとは何か?」今や禅問答のようになったこの疑問ですが、たいへん奥深いものだと思います。気軽に「土づくりにこだわって」などと言う人がいますが、「あなたにとって土づくりとは?」などと突っ込まれると、次の答えを用意できていないことが多いようです。それでも、この答えに対して最も多いのは、「堆肥を入れています。」というものですが、さらに、その先、「何のために堆肥を入れているのですか?」との問いに、「土づくりのためです。」なんてことは笑い話にもならないような話です。
土づくりの目標については、農業者ひとりひとりの農業理念によって多様であって良いと思います。私の場合は、「その農地における最大の収量を得ることであり、同時にその収量を毎年維持向上させること。」だと考えています。具体的には収穫によって失われた土壌中の栄養分を供給すること。土の透水性と保水性という相反する特性を両立することです。そのための手段として堆肥等の有機物の投入があります。堆肥投入には二つの意義があって、ひとつは堆肥の中の安定的な有機成分である腐植物質を土壌中に供給して土壌改良を図ること。もうひとつは植物に栄養を補給することです。
腐植物質は土壌中の不定形で非結晶な黒色の高分子有機化合物です。土壌中の粗大な有機物が微生物によって分解され、その分解生成物から生物的、あるいは化学的に再合成されたものです。もっとわかりやすく言えば、家畜排せつ物や動植物の遺体などの有機物が微生物によって分解しつくされたカスのようなものです。しかし、このカスが土づくりにとって非常に重要な物質となるのです。
土壌有機物は土壌中で微生物などに分解される過程で窒素やリン酸などの無機態の栄養分を放出します。また腐植物質は植物生長にとって有害な物質を吸着し、栄養分の植物への供給を助けます。さらに腐植物質が糊となって土壌粒子をくっつけて団粒構造を形成を助けます。団粒がよく発達した土壌は、透水性や保水性が良く、通気性も高くなります。
(つづく)
株式会社リープス 鈴木 善人
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