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ゲストのコラム
「農業コンサルタント奮闘記」

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2011年5月10日

− 第6話 −

 農の本質とは何か。この課題は、私が農業コンサルタントとして最初につきつけられた課題です。考えてみれば大学の農学部は卒業したもの、これまで本質的なことに向きあうことはありませんでした。しかし、農業コンサルティングを仕事とするプロフェッショナルとして、仕事に対する哲学を持つことは欠かせません。そこで、私は自分なりに農の本質を定義してみることにしました。

 まず、「農」という漢字の成り立ちを調べました。農の字の上の「曲」という字は森とか、草が茂る様を示し、下の「辰」という字は、貝殻など草を切り、土を耕す道具であるとされているそうです。つまり、農業は森や草原を道具を使って開くことを意味しているのです。人間が農業をはじめるまでは、狩猟採取の生活でしたが、やがて農によって土地を拓き、その場所にとどまって、種を播き、苗を育てて食料を得るようになったということです。

 「農」は開発行為です。人間の住む集落(コミュニティ)に食料を供給し、暮らしを支えるために、道具を使って自然から切り出した土地で安定的に効率よく食料を生産することが、その目的であり本質であると考えました。そして、その農地は、人々の暮らしとともに持続的に生産可能であるよう管理されなければなりません。これを産業としたのが農業であると定義したのです。

 そう考えれば、農業経営の目的は明白になります。

 「効率的にその農地における最大の収量をあげること」であり、同時に「高い収量を長年にわたり維持する。」ことです。しかし、このふたつの目的は、相反する意味も持ちます。収奪農業という言葉もあるとおり、肥料を与えず作物を収穫しつづけると土地は痩せ、やがて収穫量は減っていきます。化学肥料だけでも栄養分を供給することはできますが、長年、化学肥料だけで農業を続けていくと、やがて土が固く締まっていき、土壌が透水性や保水性を維持することができなくなります。

 土壌を健全な状態に保つことが農業経営の目的を果たすことです。「土づくり」の重要性がここにあります。
(つづく)

株式会社リープス 鈴木 善人
http://www.leaps.jp/

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