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戸田克樹のコラム
第161話「身近な解熱鎮痛剤⑦」

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2017年11月15日

人間の場合、熱が出たり頭痛がしても抗生物質ではなく「痛み止めや熱冷ましだけを飲んで休む」というケースがほとんどです。人医療の世界では、カゼのときに抗生物質を処方するのは時代遅れとも言われています。

だから牛でも同じなのでは?

どうでしょうか

生きている場所や環境を考えてみましょう。
私たち人間には屋根や壁がしっかりした家があり、家の中には冷暖房があり、1日の汚れを落とすお風呂があります。人間の世界では病原体は周囲にほとんどいませんし、感染するものは細菌ではなくほとんどがウイルスです。そのため、体調が悪くなったときは抗生剤ではなく解熱剤や痛み止めで体調をととのえ、免疫細胞にウイルスの排除をがんばってもらおう!という考え方が主流となっています。

それに比べて牛さんはというと、屋根はあるものの、完全に外で暮らしている状態です。冬は冷たい風にふかれますし、夏は暑くても扇風機しかありません。環境変化の影響も受けやすく、免疫力は簡単に落ちてしまいます。それに、部屋の中でおしっこやうんちもしています。とにかく周りには雑菌がうじゃうじゃいるのです。となると、人間と違って、細菌に感染しうる機会は比較できないほどに多いのです。


くもの巣はクモだけでなくいろいろな病原体の巣にもなっているのです。


牛の体が汚れるくらいぐちゃぐちゃの床だと、そこも病原体の温床に…。

牛さんが体調を崩したとき、そこには細菌が関わっているケースがほとんどです。そのため、デキサだけの投与ではなく、抗生物質も併用することは非常に重要です。

デキサだけだと感染細菌は野放し。どんどん増殖して手が付けられないところまで来てしまいます。

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