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戸田克樹のコラム
第159話「身近な解熱鎮痛剤⑤」

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2017年11月1日

デキサが夢の薬でありながら、何か危険な香りも漂わせているのにはきちんとした理由があります。

まずひとつめは、「とにかく炎症を消してしまえるそのパワー」に原因があります。
炎症の原因はさまざま。打撲などの物理的刺激によるもの、アレルギー反応、さらには病原体の感染といろいろなケースが考えられます。

打撲であればきちんと炎症をおさえてあげて、それ以上患部のダメージが大きくならないようにしなければなりませんから使用は推奨されます。アレルギー反応もすぐに抑えてあげる必要がありますから、こちらも同様です。ペニシリン投与によるアレルギー反応でもすぐにデキサで症状を緩和させ、2度とペニシリンを使わないという対応が必要です。

デキサメサゾンの使用が問題になるのは感染症の場合です。

病原体が体内に侵入し、異常な速度で増殖を始めると細胞に侵入したり、毒素をばらまいて細胞を傷つけたりします。ダメージを受けた細胞から「助けてー!」と発生されたシグナルで体内にいる免疫細胞が反応し始め、発熱したり頭痛がしたりといった炎症反応が始まります。アラキドン酸カスケードもいたるところで起こっているわけです。
コラム157話のイラスト参照
デキサを使うといったんは症状が和らぎます。
痛みを引き起こす成分が作られなくなりますからね。
コラム158話のイラスト参照

朝はぐったりして見るからに辛そうにしていたのに、デキサを投与したら昼過ぎには元気になってくれた。よかったよかった。
ところが、注射をやめると数日後にはまたぐったりしている。
仕方ない。またデキサをうつか…。
これ、非常に危険なケースなんですよ、実は。

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