(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
ゲストのコラム
「牛さんの気持ちになって考える(最終回)」

コラム一覧に戻る

2011年3月8日

〜 手段と目的を考える 〜

 哺育中の子牛さんは、人手をかけてミルクで育てるのが良いか、親牛につけて母乳で育てるのと、どちらが良いと思いますか。結果的に丈夫ですくすくと、しかも経済にあう形で育つことができれば、どちらでも良いというのが私の考えです。経済的にペイしてなおかつ将来性のある子牛を育てることが「目的」であり、どういう授乳をするかは「手段」にすぎないからです。(すぎないと言うのはちょっと過激な言い方ですが)
 「目的」達成のために、よりベターな「手段」を選択するのが飼い主の責務です。人工のミルクで育てる時は離乳まで数万円のミルク代がかかり、ミルクを作ったり給与する手間が必要です。しかし、毎日一定時間必ず子牛と接するので、観察が十分でき具合が悪い状況を早期に発見できます。また厳寒期の保温も効率よく確実に行うことができるので、子牛の快適性は高まる方法だと思います。

 親につけて母乳で育てる場合はどうでしょうか。ミルク代などの経費がかかりませんし、親の泌乳量が多いと子牛は早く成長できます。しかし、子牛は親と一緒に行動するため、運動場や寝起きする場所が汚れていると、大腸菌などのばい菌におかされる確率が高まります。また親につき従うため、具合が悪くなっても発見が遅れがちです。ただ環境面の課題は子牛だけが入れる空間を作り、そこでスターターや新鮮な水を給与し、腹が冷えない寝床にしておけば、病気の発生率は低くなります。親付けでも、工夫次第で健康に子牛を育てることは十分可能です。
 飼い主の持っている労働力や牛舎施設、投資可能な経費などを総合的に勘案し、どういう「手段」で牛を飼うのがベストか、選択する責任が飼い主にはあります。経営にあわせて適切に「手段」を選んでください。
 悩んだ時は、獣医師や普及員など最寄りの指導員に相談しましょう。
(おわり)

十勝農業改良普及センター 十勝北部支所
出雲 将之

|