(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
ゲストのコラム
「牛さんの気持ちになって考える(7)」

コラム一覧に戻る

2011年2月22日

〜 現場百回を考える 〜

 私は1978年に普及員となって32年が経ちました。この間8カ所の勤務地で普及活動にたずさわり、その勤務地ごとに全力投球してきたつもりです。思い起こせば、水田経営の複合部門として新しく和牛を始める青年農業者と先輩普及員と一緒に、和牛産地に繁殖牛を購買に行ったのが、私が和牛にかかわる原点だったように思います。
 若い頃は、牛飼い技術の理論ばかりが先走り、今思えば赤面の普及活動をしていたと反省しきりです。救いは、その当時の農家さんと最近お会いして、「出雲さんはいつも真剣に我々と接してくれたよなー」と言ってくれたことです。技術の中身はたいしたことがなくても、一生懸命取り組んでいる姿を見てくれていたんだなあと感じた次第です。

 獣医の先生もそうですが、普及員は色々な和牛農家さんの飼い方を見ることができます。それに加えて、経営的視点からその農家さんを見られるのが普及員の強みだと考えています。いくら立派な施設を作っても、採算を度外視した投資で元金を返済したら手元に何も残らないのでは、誰のための経営かわかりません。最小の投資で最大の利益が得られるような牛の飼い方について、農家さんにアドバイスすることが大事です。施設設備、農業機械、労働力、自給飼料の確保状況など、さまざまな条件の中でその農家さんがベストな牛飼いができる助言が求められます。
 牛飼いの現場をよく見なければ、本当にその農家さんにあう助言はできないと私は考えています。タイトルにもつけました、現場百回の気持ちでのぞまなければ、技術や経営に対する正しい助言はできないと思います。時には厳しい意見も言わせてもらいますが、それは農家さんを思っての発言であることを理解して欲しいものです。
(つづく)

十勝農業改良普及センター 十勝北部支所
出雲 将之

|