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松本大策のコラム
質問箱から(その1)~卵胞嚢腫が多発します~

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2017年10月27日

◎今回は、ご質問・ご相談コーナーへご投稿をいただいた質問と回答の内容をご紹介いたします。
 
 
ご相談内容
 搾乳牛に、排卵の遅れや、排卵せずに嚢腫化する牛がいます。これは、ストレスや、エサのタンパク過多、エネルギーとタンパクのバランスが悪い ?などが原因でしょうか?何かアドバイスいただけると幸いです。
よろしくお願いします。

回答
 先程は突然の電話、失礼いたしました。

 排卵遅延の大きな原因として、ビタミンAの不足が疑われます。
ビタミンAの必要量は通常時の給与量や亜鉛の給与量、肝臓の健康度などで変化します。
 また、経口大量投与の場合、1週間で約2/3は尿排泄されてしまいます。

 次に、卵胞嚢腫の原因で、もっとも多いのは、子宮内膜炎の時に出てくる細胞ホルモンです。電話で伺ったお話から、かなり悪露が長く続く牛さんがいるとのこと。そういう牛さんは、子宮内膜炎に移行することが多いです。
 悪露が長く続く牛さんの場合、分娩前後のビタミンAと亜鉛が不足していること、子宮の収縮を司るビタミンDの不足がある場合も多いこと、を心に止めておいてください。

 さて、現在の状況に対しての対策に移ります。
 まず、現状で卵胞嚢腫の牛さんは、子宮内膜炎がないか しっかりと診ていただき、少しでも疑いがあれば子宮洗浄し、翌日から2日ほど薬注します。経済性から考えると、3日の出荷規制がついても分娩間隔が長くなるより改善できると考えられますから、アンピシリンの使用をお勧めしますが、抗生物質の使用がためらわれる場合は、子宮洗浄のあと明治のキトサイド30ml+生理食塩水30mlの子宮内薬注を代替案としてお勧めします。
 PVPは、子宮内膜炎の治療効果はとても低いのですが、4倍希釈すると、かえって子宮内膜炎の治療効果が上がると言う知見もあります。

 子宮内膜炎を減らすために、分娩前一ヶ月の時期に、ゼノビタン10ml+ビタミンE注10ml+パンカル注10ml+ビタミンD3注5mlを混合皮下注し、亜鉛製剤としてドン八ヶ岳ADE 50g×10日間飼料添加してみてください。排卵遅延、子宮内膜炎、卵胞嚢腫、上手くいけば体細胞数も減ると思います。

 もしも、他の添加物でビタミンAの給与量が多い場合は、ゼノビタンを5mlにしてください。

 そちらの獣医さんにくれぐれもよろしくお伝えください。もっとも牧場のために役に立ってくれるのは、地元の獣医さんです。

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