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松本大策のコラム
牛さんの蹄の病気 その2

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2017年10月23日

 前回、「今回は左右の蹄の間の病気のお話しです。」とか言いながら、結局、餌が原因で起こる蹄の病気についてのお話しで終わってしまい、誠に申し訳ないです(とか言いながら、実はネタが一個増えてほっとしている)。

 さて今回は本当に蹄の間、つまり指間(本当は「指間」は前足に使う言葉で、後足の場合は読み方は同じですが「趾間」と書きます)の病気についてです。よく見かけるのが指間腐乱(写真1)です。指の間が腐っていく病気です。


写真1

敷料の汚染が原因のことが多く、また感染牛から敷料を通じて感染が広がることも多いです。また、経験上、ノコクズの敷料よりもバークの法が発生が多いように思います。この場合は、敷料には石灰を混ぜていただいて、発症牛は足の薬浴をして、セフェム系の抗生物質(とくにエクセネルはよく効きます)を使用します。

 時には、疣状皮膚炎とか趾乳頭腫という病気(写真2)が多発することもあります。こちらも処置は指間腐乱と同様ですが、こちらの方が重篤で再発も多いので、途中で治療を中止せず、しっかり治癒させることが重要です。


写真2

 これら、指間の病気の原因菌は「トレポネーマ(僕らが学生の頃はスピロヘータと呼ばれていました)」というバイ菌が原因です。こういう牛さんが出たときは、マスクを付け、ゴム手袋を付けて処置することをお勧めします。(本当はゴーグルも付ける方が万全ですが)。というのも、トレポネーマは人間の性病である「梅毒」の病原体である「梅毒トレポネーマ」の親戚なので、治療時などに感染すると、入院時の検査などで「梅毒じゃああーーーっ」と言われてしまう危険が高いのです。僕も実際にそういう経験をして青ざめました。いや、身に覚えはなかったですよ。本当に(←しつこいヤツは信用ならないw)。

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