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ゲストのコラム
「牛さんの気持ちになって考える(5)」

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2011年2月8日

〜 飲水について考える 〜

 「牛飲馬食」ということわざが示すとおり、牛さんはたくさんの水を飲みます。成牛で1日に30㍑程度の水を飲み、それがルーメンの発酵にも役立てられています。そのため、たくさんの水が楽に飲める工夫が必要です。 私がいる北海道は、ご存じのように冬は無茶苦茶寒いです。時にはマイナス20℃にもなり、厳寒期にビールを大量に早く冷やすには、屋外に放置するのが一番で、うっかり忘れているとシャーベットにしてしまうこともあるほどです。牛さんは寒さに強いので冬でも元気ですが、飲み水には注意が必要です。 寒い時には、温水のほうが明らかに飲水量が増えます。北海道の肥育農家さんは最近では、温水が給与できる設備にする方が殆どです。飲水量が多いとエサの食い込みがよく、尿石にもなりにくくなり、肥育牛にとっては非常に好ましいものです。(温水を給水できるようになって、冬場の尿石がなくなったのを肌で感じています。)また夏の暑熱時には、井戸水のような冷水を給与したほうが、飼料の食い込みがよく増体につながります。

 水温と同様水質も重要です。昔から良い水の出る場所に良い牛が育つと言われており、とくに暑熱の厳しい夏季や、高栄養で飼育されている牛にとっては、水質の及ぼす影響が大きいという報告があります。水質が良いと飲水量が増加し、エサの採食量も増加するからです。
 給水器にも注意しましょう。牛さんは水を飲む時、顔を水面に対して直角ではなく60度の角度で斜めに突っ込み、口を3〜4cm水面下に沈め、鼻は水面から出す状態で飲みます。従って牛さんが水を飲みやすいように、給水設備は奥行きを広くすることがポイントになります。また牛さんは臭いに敏感ですから、水が汚れていると飲みたがりません。給水設備の清掃など、メンテナンスも大切です。
(つづく)

十勝農業改良普及センター 十勝北部支所
出雲 将之

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