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ゲストのコラム
「牛さんの気持ちになって考える(4)」

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2011年2月1日

〜 食べやすい飼槽の構造を考える 〜

 肥育牛舎では、牛さんのいるマスから飼槽に首を出しながら、飛び出さないようにマセン棒で制御している構造が多いと思います。皆さんは牛が食べやすいマセン棒の高さについて、真剣に考えたことがありますか?
 高すぎると飼槽に前肢をつっこまれますが、低すぎるとどうなるでしょう。飼槽の奥に置かれたエサを食おうとして、マセン棒に首(肩?)を押しつけながら頑張ってエサを食べようとします。牛さんにとっては、かなり無理をしてエサを食べさせられている状態となります。
 そういう状態になっているかどうかは、牛さんの首から肩上部の毛のこすれ具合を見れば分かります。ここの毛が少なく、白い地肌がはっきりと見えているのは、マセン棒が低すぎるのに、エサを食いたいために牛さんが踏ん張ってマセン棒に身体をこすりつけている証拠となります。

 親しい試験場研究員が牛の行動学を研究していた時に、牛を24時間観察し続け論文にまとめました。おかげでエサの食い方や、序列による牛の行動の違いなど色んなことが分かったと言ってました。その結果を見せてもらいましたが、アカデミックな研究よりも、牛の立場に立ったこういう研究成果のほうが現場の指導員には役立つと感じました。
 エサが食いたいのに思うように食えないのは、牛さんにとってはストレスとなります。肥育中はできるだけストレスのない環境で飼育してあげるのが、和牛にとっては絶対条件です。飼槽の配置や毎日のエサの掃き寄せとともに、楽にエサにありつける環境を整えてあげましょう。ちょっとしたことが牛さんの快適性につながり、肥育成績にも跳ね返っていきます。
(つづく)

十勝農業改良普及センター 十勝北部支所
出雲 将之

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