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ゲストのコラム
「牛さんの気持ちになって考える(1)」

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2011年1月11日

〜 昔の肥育を考える 〜

 これまでの肥育農家さんとのおつき合いとその時の枝肉成績を見たうえで、和牛肥育技術の極意はどれだけ順調にエサを食わせ続けられるかだと私は考えています。エサを食い続けることで体重が増え、枝肉重量が500kgを超える立派なお肉になります。ではどうしたら、食い続けられるような肥育牛に出来るのでしょうか。
 まず、昔の肥育名人と言われた人たちの飼い方を振り返ってみましょう。肥育期間中の粗飼料は稲わらが中心で、毎日背中をブラッシングして肥育牛が気持ちよくなるように気を配り、食欲が低下するとビールなどを飲ませたり、違うエサを給与して食えるように工夫する。とにかく、エサが食い続けられるようなありとあらゆる方法で管理をしていたように思います。

 今でこそ理論的にビタミンAコントロール技術が確立されていますが、先人はそういう理論を知らなくても肥育牛には必要なことだと考え、実践していました。ビタミンA含有量が少ない稲わらや飼料を与え、食い続けさせることでビタミンAを結果的にコントロールしていたと言えます。
 しかし、現在のようにビタミンAを切らす時期と、補給してもよい時期の技術が確立されていませんでしたから、かなりリスキーな肥育だったと言えます。食い止まりになったときの対処法に優れた人が、肥育名人と言われていたように思います。基本的には育成牛の時に腹づくりが出来ていれば、食い止まりがおきにくいと言えます。また、どういう飼料を与えているかで違ってきますが、肥育期間中のちょっとしたことでも、食い止まりを起こしにくくします。そのちょっとしたこととは、「削蹄」や「飼槽の構造」、それに「反芻」と「飲み水」です。
(つづく)

十勝農業改良普及センター 十勝北部支所
出雲 将之

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