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牛さんの膵炎のお話し その1

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2017年9月25日

牛さんの膵炎のお話し その1

 みなさん、膵臓って知ってますか? 十二指腸のあたりにくっついている薄っぺらい、サンマの白子みたいな頼りない臓器です。でも、この膵臓という臓器は、ほ乳類ではとても大切な働きをするのです。その働きの1つは「外分泌」といって、消化酵素の中でタンパク質を分解する力のもっとも強い『トリプシン』という酵素を十二指腸に分泌します。この酵素がないとタンパク質は分解されないので、吸収も出来ません。

 もう一つの働きは、「内分泌」といって、血液中に大切なホルモンを作って放出します。糖尿病でおなじみの『インスリン』という、血糖値を下げるホルモンは有名でしょ?他に、インスリンの逆に血糖値を上げる働きを持つ『グルカゴン』というホルモンも分泌します。覚える必要もまったくありませんが、これらのホルモンは、膵臓のランゲルハンス島と呼ばれる特殊な細胞の集まった部分の、α細胞からグルカゴン、β細胞からインスリンが分泌されます。これらの『内分泌』の働きが傷害されるのが『糖尿病』です。人間では糖尿病もいろいろな方に分けて診断しなければならない上に、いろんな病気を併発する、とてもやっかいな病気ですか、牛さんではそういう報告はほとんど見かけません。それに話がややこしくなるので、今回はこちらのお話しはおいておきます。

 実は今回の中心的な話題は、『外分泌』の問題で起こる膵炎(写真1)の可能性のある牛さんで、ときどき見られる血液検査の異常で、あまり知られていないものについてなのです。


写真1

つづく

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