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フケのお話し

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2017年9月22日

 みなさん、台風の被害とかありませんでしたか?

 今回は、牛さんの「フケ」のお話しです。「フケ」は難しい言葉で書くと「不全角化」といって、本来なら真皮(皮膚の深いところにある細胞)が角質層まで押し出されてくるときに、細胞から「核」が抜けて平べったい細胞となります。しかし、角質層まで達しても「核」が残ってしまったものが「フケ(落屑:らくせつと読みます)」なのです。

 以前、僕のコラム「動物はチクワなのだ!」でも少し書きましたが、フケの原因というと、ビタミンAと亜鉛の不足がまず思い浮かびます。しかし、フケの原因は他にもいくつかあります。僕が現場でとくに問題視しているのは、牛さんが痩せてくる際にたくさん出てくるフケです。牛さんが痩せてくるときは、いろいろな病気であることが多いのですが、その目安にします。重度の肺炎や発熱性の消耗性疾患、腹膜炎などの化膿性疾患の時によく見かけるのです(写真1、2)。


写真1


写真2

 全く根拠はないのですが、僕はこういう病気の時にはタンパク同化ホルモンが不足するため急速に痩せていくのだと考えています。そういうときにフケが増えることを経験していますし、子牛でフケが多く、痩せている牛さんにタンパク同化ホルモン剤を投与すると(食の安全の観点からも子牛にしか投与指示しません)、フケも同時に消えていくからです。

 フケのある牛さんを見つけると、まずおおもとの病気を診断します。そしてそちらを直していくと同時に、僕がコラムでも紹介している「肺炎後処置(肺炎後と書いてありますが、本当は牛さんのタンパク同化ホルモンの誘導と、酸化障害の防止の処置です)」を実施するとフケも消えて増体も回復します。

 一つだけ、全く問題にならない「フケ」があります。それは、アイボメックやバイチコールなどの駆虫剤(アイボメックは内部寄生虫、バイチコールは外部寄生虫の駆除剤ですが)を塗布したあとに出るフケです。ですから、フケの出ている牛さんを見つけたときは、痩せてきているかの確認とともに、そういう薬をかけたかどうかを畜主さんに確認します。かけたということであれば、フケは全く問題にしません。薬の一時的なアレルギーで、すぐに治まるし被害もないからです。

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