(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
ゲストのコラム
「北国の人工授精師日誌(7)」

コラム一覧に戻る

2010年10月19日

〜 汗!! 〜

 今回は、専門的な単語が多くなってしまいますが、とある発情牛に出会った時のお話をさせていただきます。

 今の職場では年間約3,500頭に授精をしていますが、そこで珍しい牛に出会いました。その前にちょこっと生殖器のお話をしておきます。♀牛をお尻側から体の奥へ入ってみた場合「外陰部→膣→外子宮口→子宮頚管→子宮体→子宮角→卵管→卵巣」と、(いくつか省略していますが)ざっとこんな感じにできています。授精師、獣医師が注入中にゴソゴソしていますが、あれは、片手で直腸壁越しに頚管をつかみ、反対側の手で注入器を操作し、外子宮口を探り当て頚管を通過させて子宮体で精液を押し出す、という作業をしているのです(^^)専門用語だらけで分からんわ!という方の為に身近なもので例えると・・・ちくわの上に厚手のタオルを敷き、目を閉じながらちくわの穴に割り箸を通す感じ??・・・・・・やった事はありませんが、きっと例え方を間違えました(>_<)

 話を戻しますが、授精の注入困難=頚管通せない牛 というのは(中には発情ではないというのもあります)、未経産によく見られますが、頚管が細い・曲がってる(奇形の一種?)というものが多いと思います。授精師として働き始めて年、受精卵移植もしているおかげか、たいていの頚管は通せるようになりました。ところが!どうしても授精できない未経産に出会ってしまったのです(涙)。外部徴候はバッチリで前回発情からの周期もOK、子宮の収縮、粘液はまだみせてないけど、授精しましょう!となり、いつもの手順で注入しようと思ったら・・・・・・入らない(@_@;)あれ?寝ぼけてる?と思いつつも、表向きでは冷静を装いながら、気を取り直して注入!!と思ったのですが、やはり入らない。しかも外子宮口にすら当たらない。頚管を奥に伸ばし、膣も真直ぐにしてみましたが、なんだか注入器の先端と外子宮口に1cmほどの距離を感じるんです。さすがにこれは変だと思い、授精を中止し陰部を開いて中をのぞきました。そこには外子宮口というトンネルの入口が見えるはずですが、そこに現れたのは「・・・ぬりかべ?」と言いそうになってしまう程のっぺりした壁と、5mm程の二つの穴でした。何じゃこりゃ(>@<)と焦った私は、近くで診療している獣医師に電話をかけましたが「あ〜それ『膣弁』だわ」の一言で解決されました。この膣弁というのは、牛が大きくなるにつれて消失するのですが、稀に残ってしまう牛もいるそうです。まぁ、単に私の勉強不足ですよね(;_;)

 その日のうちに獣医師に来てもらい、エコーで他に異常が無いのを確認して膣弁を切ったのですが、中からは粘液と血が混ざったものが、小さいバケツ1杯分出てきましたよ〜。ちなみにこの子は手術後3回目の授精で無事に妊娠いたしました(^^)ちなみに、それから半年後にも他牧場で膣弁遺残の牛に遭遇しましたが、さすがに二回目ともなると、冷静に対処できましたねぇ〜(^3^)発情は来るけど、粘液や排血(跡も)を一度も確認したことが無い!という未経産がいましたら、授精前に膣鏡で確認してもらうといいかと思います。

 こんな経験された授精師はうちだけでは無いはず!!と、思い今回のコラムにしてみましたが・・・きっと皆さんご存知ですよねぇ(_ _;)今回は、恥ずかしながら焦ったお話でした。

ぴよこ@北国

|