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ゲストのコラム
「宮崎口蹄疫の防疫対策を検証し、新しい防疫体制の構築を提案する 〜その1〜」

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2010年9月18日

畜産システム研究所長・広島大学名誉教授 三谷克之輔

 人の生殺与奪の権を検察が握るのも恐ろしいが、家畜の殺生与奪権を国の家畜衛生に関係する「専門官」に握られているのも心配だ。彼らは口蹄疫の「患畜と患畜になる恐れがある疑似患畜は殺処分する」という家畜伝染病予防法を根拠に、家畜の体内から遺伝子検査(PCR)でウイルスの破片を見つけたら疑似患畜と認定し、疑似患畜と認定された牧場の牛、豚は全頭殺処分されている。この科学的でも論理的でもない論法で疑似患畜の範囲はいくらでも拡大でき、任意に設定した範囲の健康な牛、豚は全て疑似患畜にして殺処分されることになる。実際に移動制限された地区の牛・豚は健康であっても、その後、防火帯のようにワクチン接種後直ちに殺処分された。ワクチン接種は早くすべきであり、殺処分を前提にしたワクチン接種に何の意味があるのだろうか。また、なぜワクチン接種した家畜を殺処分する必要があるのか。マーカーワクチン使用後の抗体検査の準備を怠っていたとしか考えられない。殺生与奪権を行使するには、必要最小限の殺処分にするために、科学技術の発達を促し、経営規模の拡大を考慮しながら、常に現場にあった最善の防疫体制を準備しておく必要がある。江戸時代は人の生殺与奪の権は藩にあった。家畜の殺生与奪権は現場に近い県に与え、予算措置は国が責任を持つべきである。
(続く)

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