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ゲストのコラム
「牛から視たエサの話−42 「続・発酵させた時の落とし穴」」

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2010年8月17日

 前回は、発酵によりタンパク質が変化してよりルーメン内でアンモニアになりやすい形に変化することを説明しました。このアンモニアを処理するためには、「松本理論」ではNFC(デンプン、ペクチンなどの非構造性炭水化物)を高めることが必要であるということになります。高水分な原料ほどタンパク質が変化しますので、グラスサイレージなどの予乾させずにダイレクトに収穫する場合には水分が高いままなのでタンパク質が変化しています。そのために高水分のグラスサイレージを給与する場合(乳牛が多いのですが)には、NFC源としてトウモロコシのサイレージか穀類の多い配合飼料を組み合わせることが必要になります。

 食品残さ物では、おからやしょうゆ粕のように大豆を原料にしたものがありますので、タンパク質は高い原料です。これらを発酵飼料に使っている場合には、タンパク質が変化するのでその対策として穀類(圧ペントウモロコシ、圧ペン大麦、ビートパルプなど)を混合して栄養バランスを取るケースが多いようです。しかし、この場合に問題になるのは穀類が発酵する時に酵母による発酵が起こるケースがあります。特に気温の低い時期には、酵母が繁殖し易い条件になります(日本酒の仕込みは、冬にします)。そうすると、発酵飼料にアルコールが出来てしまいます。いわゆる酒入り飼料になってしまいます。これは、高水分でも起こり易いのですが、事例では穀類を用いた場合で水分が低い時(40%程度)にも起こっています。

 一般的には、サイレージなどでは、アルコールを含んでいるものは、給与してはならないとなっています。このような飼料を給与すると、肉や牛乳の異常風味の原因になったりしやすくなります。またアルコール臭がするものは、酵母が多いので開封後にこの酵母により2次発酵が起こりやすい条件にもなります。発酵飼料(サイレージも含みますが)でアルコール臭がするものを給与する場合には、注意が必要です(表—1参考)。

 しかし、あるところで話を聞くと発酵飼料の変質防止にアルコールを添加しているものをあると聞きました。あまりアルコールの添加量は多くないと思いますがちょっとびっくり!です。

(著:東京都 村田六蔵)

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