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松本大策のコラム
牛が枯れるということ

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2017年8月2日

 今回は、肥育それも霜降り重視で育てている方へのお話しです。

 みなさん、牛さんは順調に育っていますか?理想から言えば、いい系統で、少しやせ気味でフレームサイズの大きな子牛を購入して(しかも安く(笑))、しっかり腹作りをして中期からガンガン食わせて(といっても、牛さんのタイプで、食わせる量と増飼の仕方は変わります。田尻タイプはゆっくり目で発酵速度の遅い餌、毛高タイプは早いうちからカロリーが高く、発酵速度の速い飼料を多めに打ち込んでいくのがセオリーです。)、後期には牛さんがぱんぱんに膨れるくらい太って、そこから仕上げの期間に牛さんが形が崩れたように縮んで見える、というのが理想です。

 しかし、中には前期に食い込みすぎて中期に食い止まりが続き、後期から出荷前にかけても、食欲が落ちないで、出荷の際にも牛さんはパンパンに太っている、というケースが出てきます。素人目に見ると、『すごくいい牛だなぁ』という感じなのですが、こういう牛さんは、筋間脂肪のカミが厚くて、霜降りが少なく、皮下脂肪が厚くて締まりが悪いことが多いです。こういう牛さんは肉色もよくありませんよね?
 後期以降に筋間脂肪を改善するのは無理だと思いますが、せめて霜降りを改善し、皮下脂肪を薄くして、肉色を改善してあげたいと思うのは、コンサルタントの人情でしょう。

 あくまで、だまされたと思ってやってみていただきたいのですが、出荷前に1ヶ月間、一般ふすまを日量1kg振りかけて食べさせてみませんか?僕はこの方法を多くのコンサル先で実施して効果を上げています。どうしてなのかは解りません。ただ、偶然の産物で、以前指導していた農場で、出荷前の牛さんにある添加剤を1kg与えて欲しいとお願いしたのですが、伝言リレーで間違って現場に伝わり、『その牛舎全頭に、一般ふすま1kgを1ヶ月間(僕は月に一度の指導でしたから)与えられていたのです。その牛舎には16ヶ月齢以降の肥育牛がいたのですが、なんと全頭見事に枯れていたのです。なんか、「カロリー不足で痩せた」というのではなく、皮下脂肪が落ちてしまうような不思議な痩せ方でした。そしてそこの仕上げ期の枯れにくかった牛さんが見事に枯れて、霜降りもしまりも肉色もよく、また当然皮下脂肪も薄くなっていたのです。ただ、現場ではいろいろなケースがありますから、みなさんが試験するときは、一部でやってみてくださいね。

 よく、毛がぱさぱさになっている牛さんとかを『枯れている』という人がいますが、僕は、あくまでもそういうのではなくて、皮下脂肪の老化萎縮だと考えています。だから、出荷牛の選定も、胸垂がしぼんでいるか、陰嚢がしぼんでいるか、鞍下あたりの脂肪が薄くなっているか、などを参考にしています。鞍下の枯れのない牛さんのビデオを乗せておきますね。

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