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松本大策のコラム
枠に乗り上げた牛を放っておいたら...

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2017年7月31日

 肥育牧場でも繁殖農場でも、ときおり隣の部屋の境の枠場に乗り上げている牛さんを助けて欲しいという診療依頼が来ます(写真を探したのですが、ありませんでした。さすがに緊急事態の時に悠然とカメラを向けているとぶん殴られますからね)。

 牛さんと直接話したわけではないので、どうしてそのような無謀なことをしたのか、動機や背後関係は解りませんが、肥育牛の場合は注意すべき時期があります。

 僕は、ビタミンコントロールをおこないませんが、コンサル先以外の診療先などでは、やはりまだビタミンAコントロールをおこなっている農場があります。そして、たいていは22~23ヶ月齢くらいで、食欲が限界というときにビタミンAを給与してビタミンAの欠乏をぎりぎりで防いでいる農場も多く見かけます。

 実は、このときに生殖本能が戻りやすく、発情乗駕行動も増えるのです。つまり、ビタミンAを節約しながらぎりぎり生きていた牛さんに、急にたくさんのビタミンAを与えることで、繁殖本能への余裕が出てくるのでしょう。ですから肥育中期以降にビタミンAを再投与する際には、牛さんの上賀行動がないか、しっかり見ておきましょう。枠への乗り上げだけでなく、滑って股ざきとかも出やすいですからね。繁殖農場では、発情期に注意しなければなりません。いずれにしろ、枠は思いっきり高くする方が安全だと思います。

 枠に乗り上げた牛さんは、枠から下ろして救出成功!というわけにはいきません。見た目はそんなに悪くなくても、皮の下の組織が壊死していたり障害を受けていたり、と後々問題となることがあるからです。

状況に応じて(もしかしたらすぐに出荷しないといけないかもしれないのでその場合は、出荷規制のある薬剤は使えません)、とりあえず消炎作用のあるステロイド剤や出荷規制の短い抗生物質、血行をよくして細胞へエネルギーを与えるパンカル注やビタミンE注などを使い生ますが、畜主さんにも、毎日しっかり観察をお願いしておきます。触れば、異常があるときは皮が硬く感じます。そのようなときは化膿とかする前に壊死した皮を取り除き、キチンやキトサンなど(化膿がある場合、キトサンは使いません。そのときはキチンを当てるか、お砂糖をまぶしてインシュリンをかけるかします。出荷規制の短い抗生物質も使います。)をあててガーゼとビニールなどでカバーします(場所が場所なので、広めのビニールをボンドなどで接着するとはがれません)。

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