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ゲストのコラム
「舞子ぷらずま☆—プラズマキッチン便り—第7回」

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2010年7月6日

〜 地域の食文化<3> 〜

 学生時代にカナダのバンクーバーに半年ほど滞在したとき、菜食主義者=ベジタリアンが多いのに驚きました。日本だと、ベジタリアンという言葉は知っていても、日常生活で実際に会うことはそう多くありませんが、あちらは本当に多いの!カナダは移民の国、特にバンクーバーは移民に好まれる街なうえ、ヒッピー的な文化を色濃く受け継ぎつつカナダの西の玄関口として発展している地域性もあり、宗教上の理由だけでなくさまざまな信条によって、ベジタリアンとして生活する人が多いようです。スープなどから吟味して動物由来のものを完全に退けようとするストイックなベジタリアンもいれば、乳製品とお肉を避ける人、特定のお肉だけを制限する人まで、程度も色々。

 嫁舞子のお友達がホームステイしていた、アイルランド系移民の夫婦もベジタリアンでした。何度かディナーに呼んでもらったのですが、人を招くときは、夫婦ふたりだけベジタリアン用のおかずを作り、ゲストにはお肉も使った普通の家庭料理を出してくれるんですね。でも、嫁舞子にとっては、ベジタリアン食文化のほうがひたすら珍しく興味津津。キッチンでお手伝いをしつつ試食させてもらいましたが、雑穀のミートローフ風や、ベジタリアン用ソーセージ(お肉を使っていない代替品、大豆などでできている)で作ったキッシュなど、かなりボリュームがあっておいしい食事でした。スーパーやデリにはお肉の代替品が豊富に並んでいるし、ベジタリアン用メニューを用意しているレストランも多く、ベジタリアンでいることはそう大変なことではなさそうに見えました。

 そんな文化のなかで特に感心したのは、嫁舞子が見た限りですが、誰ひとりとして他人がお肉を食べることを批判したり、ベジタリアンとしての信条を声高に喧伝する人がいなかったこと。逆に、ベジタリアンを馬鹿にしたりする人も見なかった。そういう信条をもつ人って他の人にも勧めたがる傾向がありそう…、なんて偏見は見事に打ち砕かれました。

 先週のコラムで「The Cove」の話題に触れましたが、あの主張だけが欧米文化圏の総意であるということは決してないと思います。イルカ・クジラ漁の是非にせよ、ベジタリアンのあり方にせよ、どこの文化圏にでも自分の信条以外は認めたくない極端な人は、少数はいる。でも、バランスのとれた文化観をもっている人がやっぱり大多数なんじゃないかと。嫁舞子の少ない経験からだけれど、そう感じています。
(つづく)
               著:黒沢牧場 上芝舞子

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