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症例紹介 その4 |
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2017年7月25日
尿沈渣で確認のとれた沢山の白血球に関して、さらにその種類の判定の方に進もうと考え顕微鏡の倍率をもっと大きくしてみました。すると「好中球」と呼ばれる白血球がほとんどを占めていることが分かりました。

好中球が主体となっているとき「膀胱炎、腎盂腎炎、尿道炎、前立腺炎」という疾患が予測できるのですが、どの疾患にしても重い病気、、、しかもこの牛さんに関しては会陰ヘルニアを併発している、、、。獣医師としてヘルニア整復を実施するのはもちろん大事なのですが、今回は尿路系の感染症をクリアにしなければヘルニアを何とかできたとしても予後が悪くなってしまいます。その後5日間尿路系疾患にターゲットを絞り注射、点滴、また飲み薬を与えました。
5日間の治療が終わったとき、リチェックということで採血を実施し初診時の結果と加療により値がどのくらい変化しているか血液検査をしたのですが、残念ながら初診時の尿素窒素(BUN)143.6 mg/dl クレアチニン10.11 mg/dl という高値からの変化はほとんどなかったのです。やはり炎症の波及の程度が大きかったのでしょうか。状態の改善がみられなかったことを飼い主さんに説明し、牛さんは安楽殺に。解剖を実施したところ腎臓は膿汁に満たされており、典型的な「化膿性腎炎」でありました。

腎盂の方までも膿汁が発見できた上に、左右両方の腎臓が化膿性病変でした。
尿路系の感染が無く炎症が進んでいない状態であればヘルニアの整復を行い予後は良好であったかもしれません。今回の症例を今後出会うであろう症例につなげて精進できるように頑張ります。
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