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蓮沼浩のコラム
第478話:何処に注目? その5

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2017年7月21日

 連日暑い日が続いています。こんな時は坊主頭にしたいと思うことがあります。ただ、何年も前に坊主にしていたのですが、一部の農家さんから危険人物のように見られてしまった事があるので今坊主頭は封印しています。
 
 今回は肥育牛の注目する点についてお話ししてみましょう。もちろん発育状態や病気に注目することは非常に重要です。しかし、獣医さんは病気だけでなく他のことにも注目しなくてはいけません。それは何か?

 肥育牛の「価値」についてです。

 では「価値」とはいったい何を指すのか。「価値」という概念は非常に難しいので、今回は単純にその牛さんを枝肉にしたときの売り上げにしておきましょう。私達獣医師は肥育牛の診察をする時、つねにその肥育牛の「価値」を念頭に診療することが重要になります。特に肥育中期を過ぎてきた場合は、必ず今の状態で出荷した場合はいくらぐらいの売り上げになるのかを頭の中で素早く計算する必要があります。肥育後期の急性肺水腫のように、症状によっては治療を行わずに速やかに出荷を選択する場合が良い時もあります。診察している肥育牛を前にして農家さんと病気の状態、どれくらい治療費がかかりそうか、治るのか治らないのか、農家さんの気持ち、などを総合判断する必要があります。その時にこの肥育牛の「価値」というものがある程度わかっていないと、とんでもない失敗をやらかします。
 たとえば、肥育後期の牛さんに出荷規制の長い抗生剤を使ってしまい、出荷しようと思ってもできない例などなど。病気のことだけでなく、素牛価格、枝肉相場、経費などある程度の数字は獣医さんも当然知っておかなくてはいけません。

 小生は農家さんから出荷成績の話を聞いたり、市場から買ってきた子牛の話をしたりする時に子牛市場平均や、枝肉相場の状況などできるだけ最新の情報を聞くようにしています。ただ闇雲に治療するのではなく、肥育牛の「価値」ということにも注目して診療することはとっても大事なことですよ。

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