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笹崎直哉のコラム
症例紹介 その3

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2017年7月11日

(本日掲載された症例の写真に不備がありましたので訂正版をアップ致しました。大変申し負けありませんでした。)

 ヘルニア輪が確認できたとき「もしこのヘルニア嚢内に潜んでいるのが膀胱だとすれば、会陰ヘルニアということになるのだろうか?」という考えに至り、ますますヘルニア嚢の正体が気になって仕方なくなってしまいました( ;∀;)。
 ちなみに会陰とは肛門と泌尿生殖器の出口周辺の部分のことを指します。この会陰部の筋肉が萎縮を起こし、隙間ができるとします。そこから膀胱、腸管、大網、腹腔内脂肪などがとびだしてヘルニアが形成されることがあり、これを会陰ヘルニアと言います。

 私はこのヘルニア嚢の正体を暴くため、次のアクションに突入しました。「ステップ④ 超音波(エコー)検査」です。
 すると 期待していたような低エコー像(反射がなく黒っぽく写る部分)を確認しました。膀胱結石のような像は写りませんでした。

低エコー像が示されるときは液体(体液、血液、浸出液etc…)を反映しているので、今回のケースで考えると、膀胱の一部が描写できているのでは?と予想しました。そしてネクストステージ「ステップ⑤ 膀胱穿刺と尿検査」に突入です。一般的に膀胱穿刺法は、無菌的に尿を採取することが可能であるため、バイ菌を調べる検査や培養に適しています。
採れた液体は臭いをかいでみると典型的な「尿」であることが間違いなかったのです。しかし気になったのが尿にしては色味がないということでした。早速採尿した試験管を遠心分離器で遠心させ、その沈渣を染色し、顕微鏡で見てみると驚くべき光景が広がっていました。

一番の驚きは正常な尿沈渣ではほとんど見ることのない白血球がた~くさんいらっしゃることでした。私はふとこのように思ってしまいました。
「こ、これを見る限りだと、あの牛さんは化膿性腎炎とか膀胱炎になっているのではないか??」

つづく

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