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笹崎直哉のコラム
症例紹介 その2

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2017年7月4日

 尿素窒素(BUN)143.6 mg/dl クレアチニン10.11 mg/dl
という突発的な検査数値が頭の中を巡り廻るなか、農場に到着しました。ひとまず基本に戻り「ステップ① 望診」に集中し何か異変がないか探ったところ

やけに足をお腹に向けて挙げているのです。この時点で「う~ん。お腹の中の何処かに違和感があるんだな」という予想を立てました。そして血液検査のこともあって腎泌尿器に注目し陰毛や排尿状態を確認するも特に異常は無し。しかしある一箇所に目が止まってしまいました。

そうです、陰嚢より尾側方向にピンポン玉より一回り大きいくらいの袋のようなものを確認したのです。「この正体はいったいなんだ、、、」という疑問を持ちながら「ステップ② 触診」に入りました。

この謎の袋は触診上で液体が貯留しているような感触で、比較的強く推してみると子牛さんの陰部からポタポタと排尿が確認できるのです。私の中で「ここには尿が貯留しているのであろうか」という考えが構築されました。その他触診で、子牛さんの全体の皮温ははやり冷たくパリッとしない顔つきをしております。続いて「ステップ③ 深部触診」に入りました。そうです、謎の袋に焦点絞りトライしてみました。子牛さんを仰向けにしてがっつり深部触診を実施しました。

結果は驚くべきことにヘルニア輪のような穴が形成されておりました。
「え!これはヘルニアの一種なのか!?」

つづく

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