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ゲストのコラム
「牛から視たエサの話−39 「続・続 子牛とかあちゃん牛」」

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2010年4月27日

 分娩前には、かあちゃん牛は子牛への栄養供給の増加や乳腺の充実(泌乳準備)に多くの栄養を必要として、分娩後の繁殖準備にも栄養が必要です。このような大変な時期ですが、その栄養が不足すると、初乳にも影響が出来ることがわかっています。特に初乳の比重が低下してしまい、せっかくの初乳も薄くなってしまう場合もあります。
 乳牛などでは、このことが顕著に現れてきます。ある乳牛での事例ですが、乳牛に和牛受精卵を移植して分娩後2週間で和牛繁殖農家が引き取る事業を行っていたのですが、その子牛のほとんどが引取り後必ず下痢、カゼになってしまい、非常に死亡率が高くて困っていたそうです。そこで、家畜保健所で調査したところ、ほとんどの乳牛で初乳の比重がなかったことが判明して、子牛に別途粉末初乳の給与を行ったそうです。その地区では、乳牛の事故率も高く、牛の廃用も多かったそうです。乳牛の例ですが、実際に和牛でも起こっている可能性もありますので、分娩前の栄養管理が重要になります。
 また、初乳には免疫グロブリンの他にも、子牛のため抗菌性タンパク質も含まれています。主にラクトフェリンやラクトパーオキシダ—ゼが含まれています。これらは、腸管などで抗菌作用を発揮して腸内の悪玉菌の増殖を抑える働きをします。これらの成分もかあちゃん牛が十分な栄養とストレスのない環境(放牧では高まる傾向があります)では十分にかあちゃん牛のミルクを通して供給されますので子牛も順調に発育していきます。ミルク(母乳)のことからも分娩前のかあちゃん牛に栄養供給が必要であることになります。

(著:東京都 村田六蔵)

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