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松本大策のコラム
肝膿瘍という病気と「動物はちくわなのだ!」のお話 その2

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2017年7月3日

 さて、動物はちくわなのだ!という強引な理論展開をしたところですが、この表面の細胞は、「上皮細胞(化粧品の宣伝などでは“表皮”という言い方をしているので、こちらがメジャーかな?)」というものでできています。上皮細胞は、作られてから少しずつ表面へ移動していきます。皮膚では、この過程で、細胞の核がなくなり薄っぺらなタイルのようになって表面を保護しているのです。これが『角質』というものですね。

 それで、もし亜鉛とビタミンAが不足すると、不全角化といって、上皮細胞の核がなくならないまま異常な形で表面まで重なった状態になり、ボロボロトはがれ落ちやすくなります。これが『フケ』ですね。

 ちくわの内側、つまり消化管では、第一胃以降は、栄養の吸収のために細胞が変形することなく、核もなくならずに表面を覆っているのですが、亜鉛とビタミンAが不足するとやはり表面の細胞が不全角化を起こして、ざっと言えば『フケ』の出ている状態になるのです(学術的に言うといろいろあるのですが、分かりやすく、ということでかなり雑な説明です)。

 それで何が言いたいかというと、亜鉛とビタミンAが不足すると、ちくわの穴の表面(つまり消化管の上皮)も異常になって、栄養の吸収が悪くなったり、バイ菌が表面から侵入しやすくなったりするわけです(この状態を業界用語でルーメンパラケラトーシスというのですが、簡単に訳せば「第一胃にフケが出ているよ」ということです)。

つづく

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