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ゲストのコラム
「和牛1頭仕入れの焼肉南山奮戦記(10)」

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2010年2月2日

〜 お客様に届けたい牛肉とは 〜

 南山の産直仕入れが、八千代黒牛と近江牛と短角牛の3種になると、管理や商品化が複雑になり大変でしたが、それ以上に、お客様にそれぞれのお肉の魅力と特徴をきちんと伝えることは大変でした。各牧場にも何度も足を運び、生産者さんと語り、一生懸命勉強しましたが、だんだんいろんな矛盾にぶち当たり、南山が選ぶ牛肉の基準をどこに置くのかを明確にする必要が出てきました。
 黒毛和牛に負けぬ味を目指すF1八千代黒牛、子牛の産地や飼料に特にこだわりのない岡喜牧場さんの近江牛、絶滅の危機に瀕して「味の箱舟」に認定された短角牛…。F1は、F1としての独自の個性をどう位置づけるのか、滋賀県で育てるだけで近江牛ということで納得していいのか…。「味の箱舟」に認定されたことが短角牛の売りになるのか…?
 A5に格付けされた牛や共進会で賞を取った牛が必ずしもおいしい訳ではないという経験や、健康的な自然放牧が売りの短角牛が、季節によって味にばらつきがでることなどにも悩みながら、南山らしい産直牛を模索しました。
 そして、ブランド力の弱い南山は、まずは「和牛」というブランドに頼り、赤身の短角和牛と霜降りの近江牛という両極端の2種にしぼりこむことにしました。
 その後、自給飼料づくりで環境保全型の畜産に取り組み、母牛に母乳で子育てさせる近江牛繁殖肥育一貫農家の木下牧場さんと出会えたのですが、これには衝撃を受けました。木下牧場さんと短角牛との共通点は、生まれた子牛に名前をつけてわが子同様に愛情深く育てる、小規模な繁殖肥育一貫農家さんということです。この牛飼い魂が、南山には一番魅力的な「売り」となったのです。

つづく
焼肉料理屋南山 店主 楠本貞愛 記)

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