(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
ゲストのコラム
「和牛1頭仕入れの焼肉南山奮戦記(8)」

コラム一覧に戻る

2010年1月19日

〜 生産者さんの思いを伝える産直牛 〜

 産直で牛肉を仕入れ始めると、F1の八千代黒牛にも、近江牛にも、お客様に伝えたいことがたくさんありました。
 F1には、酪農に不可欠な子牛の誕生と、肉用に育てねばならない牛の存在意義があり、肥育技術にも、和牛の世界とは違ったこだわりがあります。
 また、歴史ある近江牛の肥育農家からは、九州や中国地方、純粋な但馬牛など、生まれの違うさまざまな近江牛をいただき、全国の子牛市場を回って子牛を仕入れる醍醐味や、数ある枝肉の中からよいものを選んで買い付けをする面白さをお客様に伝える努力をしました。
 こうして、和牛に負けない味の、量的にも価格的にも有利な八千代黒牛と、誰もが知っている人気ブランド和牛の近江牛が南山に並ぶようになったのですが、まだどうにもくいたらないものがありました。そこで新たに取り組んだのが「いわて短角和牛」です。
 実は、短角牛は、固くて水っぽくてやすっぽい味の牛肉という風に聞いていたのですが、牛が牛らしく山に放たれて、自然交配で子を宿し、親子放牧で育つ、その姿の美しさにやられてしまったというところです。
 味も、それまで悪評を耳にしていただけに期待以上の牛肉と評価できました。評判が地に落ちたところから這い上がらねばならない南山は、どこでも食べられる黒毛和牛や国産牛より、他店が扱っていない短角牛を「売り」にすることにし、仕入れに駆けずり回りました。
 短角牛の仕入れルートがつくや「霜降り和牛を卒業したら、短角牛にたどり着く」という刺激的なキャッチコピーで、短角牛の豪華なギフトにも挑戦しました。

つづく
焼肉料理屋南山 店主 楠本貞愛 記)

|