〜 1頭仕入れが開いた産直への道 〜
修行をさせていただいた和牛問屋さんから黒毛和牛のA3クラスをいただくようになったのが2005年1月。ちょうどトレーサビリティ法の施行と同時スタートです。 最初は和牛問屋さん直営の焼肉店で使用なさる枝の半分をいただいて、その肉質の状態や評価などを丁寧に教えていただきながら、A5ではない味本位の「和牛の旨み」を売りに、メニュー化する術を学びました。「和牛問屋のプロの目利きが選んだ黒毛和牛」が売りで、産地は島根、奈良・・・とさまざまでした。 また、枝肉だけでは人気部位のカルビが不足するので、バラも原木でパーツ買いをしていたのですが、トレーサビリティ法の施行で和牛不足!という事態が起こり、突然「明日出荷予定のバラの手配ができません」という電話。さらに、「数百万を積んで先買いせねばこれからもバラは押さえられません。」と言われ、生殺与奪を仕入れ業者さんに握られるという危機に見舞われました。 それを機に、黒毛和牛ではない、F1が南山に登場し、産直への道が開けました。 この1年前に、焼肉業界の方々が産直取引を模索しておられた先が、千葉県旭市の椎名牧場で、ここは、直売所も経営しておられる先進的な牧場で、酪農との連携でF1のメス専門。しかし、椎名さんと焼肉業界との産直は頓挫していました。焼肉の人気部位だけを産直だから安く仕入れたいという勝手なお客に、椎名さんも辟易しておられたのです。 1頭仕入れ技術のある南山が、産直取引をするのはたやすいことでした。味本意を学んだ南山にとって、トレサビ前は和牛でまかり通っていた上質のF1は、いい加減な和牛以上においしい牛肉だったのです。
つづく (焼肉料理屋南山 店主 楠本貞愛 記) |