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ゲストのコラム
「和牛1頭仕入れの焼肉南山奮戦記(4)」

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2009年12月22日

〜 和牛1頭仕入れ技術の習得 〜

 和牛と呼ばれる高価な肉を1頭仕入れすることになって初めて学んだことは、お肉に雌雄があるということ、国産牛と和牛が違うということ、肉の部位名がものすごくたくさんあるということ…などなど、それはそれは学ぶべきことがたくさんありました。
 それまでは、数社のお肉屋さんに価格を競わせ、ロースで売る肉、カルビで売る肉を探してもらうというのが肉の仕入れ担当の仕事。入れ代り立ち代り業者が訪ねてくる忙しげで、難しげな聖域でした。
 おいしいお肉を仕入れてくれるように頼んでも、「この価格で持って来いと頼んで、いい肉がくるはずない。でも今は、どこの焼肉屋でも同じ条件でやってるんだから。」と、聖域は動きませんでした。
 結果、古い頭の肉場担当は和牛1頭仕入れへの挑戦についてこれず、当時小料理屋と掛け持ちのバイトをしていたフリーターの若者を口説き、修行に行ってもらいました。
 彼は手間隙のかかる小料理屋の世界を知っていたので、和牛問屋から学ぶ手数のかかる肉の捌き方や、小分けし管理する方法、部位別の商品化と値付け方法など、丁稚奉公のような姿勢で謙虚に技術を学び、それを皆に伝えるためレポートも書き上げてくれました。
 こうして私たちも、去勢、ヌキ、メス、経産などという怪しい業界用語を平気で口にできるようになり、牛肉の世界の奥深さにどんどん引き込まれていきました。
 つぶれかけの焼肉屋の空気は一変。売上も勝手に上がりだし、当時のフリーター(現在の調理長)が修行に行って3ヶ月もたたないうちに和牛の枝肉仕入れ(半頭)ができるようになりました。後は経験を積むだけです。

つづく
焼肉料理屋南山 店主 楠本貞愛 記)

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