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「こんにちは!こちら金沢動物園です!(9)」

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2009年11月10日

〜 「動物園の獣医さん」 〜

動物を飼われている方々にとって、“獣医”は割合なじみのある存在だと思います。動物園でも、家畜や伴侶動物の獣医さん達とやっていることにさほど変わりはありません。しかし、動物園にいる動物達はちょっと変わった動物ばかり。片手で簡単に持ち上げられるものからトラックに乗りきらないものまで、また特定の植物しか食べないものから何でも食べてしまうものまで、と様々です。そして何より違うのは“野生動物”であることです。

野生動物にとって、警戒心は生きる上で最も大事な事と言っても過言ではありません。動物園の動物達も、飼育されているとはいえ、根は野生動物。その警戒心はなかなかのものです。部屋に新しい水桶を入れただけで、「いつもと違うっ!」と頑として部屋に入らなかったり、人に近付かず触ることすらできない動物もいます。そんな動物たちの治療は苦労が絶えません。そもそも治療をどうやって行うのでしょうか?

・・そこで問題。皆さんなら、近づいてくれない相手に何かをしたいとき、どうしますか?(1)飛び道具を使う?(2)寝込みを襲う?

・・というのは冗談ですが、方法としては大体こんな感じです。
(1)飛び道具とは、“吹き矢”のことです。吹き矢は、長い筒に専用の注射器を入れ、息を吹き込んで飛ばす原始的な道具ですが、離れている相手に注射をするにはこれが一番!
次に、(2)寝込みを襲う。・・と言っても、ただ寝ているだけでは触ったとたんに起きて暴れてしまいます。つまり、治療中も起きないようにするために麻酔をかけるのです。健康状態のわからない動物に麻酔をかけることはリスクも伴ため、その治療が本当にやらなくてはいけないことかよく検討しなくてはいけません。

「動物園の動物たちはのんびりしてて癒されるよね〜」なんてよく耳にしますが、実は意外に野性味あふれる動物達ばかりなんです。動物園を訪れた際、“キリンの口の中を見るに・・”、“ゾウに注射を打つに・・”なんて想像してみて下さいね。結構大変なんですよ。

(つづく)
著:金沢動物園 獣医師 亀ヶ谷千尋

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