コアラは、オーストラリアのユーカリの森に生息し、1日の大半を樹上ですごします。国内のコアラの飼育園館は9園館あり、当園は5番目にコアラの飼育を開始しました。現在オス2頭・メス3頭を飼育しています（10月1日現在）。

みなさんご存じのとおり、コアラの餌はユーカリの葉です。他の木の葉や草には見向きもしません。また、水を飲みに地面に降りてくることもなく、100％ユーカリに頼って生きています。
ユーカリの葉は、タンパク質含有量が少なくて、繊維質が多く、さらに有害なオイル類が含まれていて消化しにくいため、他の動物は好んで食べません。コアラがユーカリを主食にできるヒミツは、盲腸と肝臓がポイントです。繊維質が多い葉は、盲腸で消化をたすけてくれるバクテリアたちを使い分解してエネルギー源として利用しています。また、有害なオイル類は肝臓で解毒され体外に排出されます。
主食とはいえ、もともと葉に栄養が少なく、消化にとても時間がかかるため、次から次へとモリモリ食べるわけにはいかず、採食量は4kgの給与中多くても500g程度です。だから、あまり多くのエネルギーを作り出せないので、寝ている時間を長くして、エネルギーを節約しながら生きているのです。

ちなみに、金沢動物園では、9種類のユーカリを扱っており、そのうちの5種類を毎日選んで与えています。しかし、コアラが必ず食べてくれる種類が決まっているわけではなく、昨日はよく食べていた種類でも、今日はほとんど食べないということもあります。また、「この時期はこの種類をよく食べる」という傾向があるわけでもないので、コアラが食べそうな種類を毎日選んであげることが、担当者の大事な日課となっています。

（つづく）
著：金沢動物園　飼育展示係　新藤いづみ