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笹崎直哉のコラム
休題~大反省~

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2017年5月2日

 皆様お疲れ様です。私はというと2年目の獣医師になり、少しずつ自分自身の診療に自信が持てるようになったのですが、先日初歩的なミスをしてしまいました(泣)。

 「診断をしっかりとつけてから、治療に臨むこと」

 このキーワードは蓮沼所長から、日頃から言われていることでした。しかしここ数日前に出会った症例は確実な診断をつけれていない、いわば「あやふやな診断」をつけた状態で治療をスタートしてしまいました。そうすることで治療方針に自信が持てず、取り返しのつかないことになってしまうのです。

 さてその症例はというと、、、
「導入して1年になる肥育雌牛が、エサ食べないし下痢してる」との電話を頂き、往診。その牛さんの部屋の床には臭いの強い緑~黄緑色の泥状の便があり、ややお腹が巻き上がっており、皮温はやや冷たいといった状態。
直腸検査をすると、酷いくらいにむくんだ直腸粘膜に触知、粘液が混じった便が少量直腸に残っていました。聴診をすると胃の動きは弱く、右腹部の拍水音が聞こえました。
当時は「ビタミンA欠乏症、腸炎、肝炎が絡んでいるのだろうな」という自信が持てない診断をつけて治療に走ってしまいました。その後2日間点滴して食欲が戻ってきたものので、点滴を終わりにして注射のみの治療にシフトしました。ところが症状の改善はあまり変わらず、便は相変わらずの泥状。
次の日「先生、全然食わなくなったよ」とのことで往診し、確かに胃の動きは無くなっておりました。こりゃまずいと思いすぐさま、検査のため採血と糞便採取を行いました。
さっそく事務所にもどり糞便検査をすると、、、思わず叫んでしまいました。

「コクシジウムの虫卵があるじゃないか~!!!しかもOPG値は約6万だ!!さらに病原性の強いC.zuerniiばっかりじゃないか!!」

便には血が混じっていなかったので病原体は混合感染ではなく、おそらくコクシジウムの単独感染が原因だったのでしょう。その日は非常に反省しました。初診から念入りな検査に踏み入れなかったことが原因です。初歩的なミスをしてしまい、蓮沼所長の名言

 「診断をしっかりとつけてから、治療に臨むこと」

が30回くらい頭の中をフィードバックしました。大反省です。

おしまい

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