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アノアは、別名を「小水牛」といい、野生のウシの仲間では最も小さな種です。インドネシアのセレベス(スラウェシ)島にのみ分布し、ローランドアノアとマウンテンアノアの2亜種がいます。分布域が非常に制限されているうえ、過度な狩猟と生息域の喪失によって衰退し、IUCN(国際自然保護連合)レッドリストに絶滅危惧種として記載されています。 金沢動物園で飼育しているのはローランドアノアで、低い山地の森林や湿地帯に単独またはペアで生息しています。雌雄ともにある角は後方にまっすぐ伸びるのが特徴で、これは森林で生活することから、藪などに角が引っ掛かって邪魔にならないためと言われています。成獣の体色は黒褐色で、子どもの頃は明るくきれいな茶色の毛におおわれています。小さな体のわりに気性が荒く、攻撃的で危険と言われていますが、飼育下ではよく人に慣れるようです。黒くて丸い目がとても愛らしく、つい気を許してしまいそうになりますが、小さく見えても体重は100kgを軽く超え、力も強いアノアは油断大敵。飼育員もうかつに近づくことはできません。 現在、国内で飼育されているのは当園の1頭のみです。26才のメスで、とても人懐っこく、食欲旺盛で元気いっぱいの個体です。しかし、高齢であるために健康管理には特に気をつかっています。飼育下での最長寿命記録の28才といわず、30才目指して長生きしてほしいと思っています。 このアノア、当園では野生ウシの仲間で最大級とされるガウルと並んで展示されていて、たまにガウルの仔と間違われることもあります。さて、次回は最大級のガウルのお話を…
(つづく) 著:金沢動物園 飼育展示係 飯野雄治 |