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戸田克樹のコラム
第133話「困ったときのリカバリー Episode ①-稟告編-」

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2017年4月18日

「突然エサを食わなくなった牛がいるんだ」
という稟告を受け、とある牛さんを診察したときのお話です。
その牛さんは出荷まであと5か月。
順調に食い込んでいたのに、突然食欲が落ちて、ほとんど食べなくなった様子。

突然…( ゚Д゚)。

診療現場であまり耳にしたくないワードですよね。
「突然立たなくなった」 
「突然倒れた」などなど…。

尿石症、重度ビタミンA欠乏症、腸閉塞、重度感染症、急性ルーメンアシドーシスなど、生命の危機や廃用出荷がちらつく重大疾病を抱えている場合が多いからです。
稟告に「突然」が入っていましたので、結構な不安を抱えながら農場へ向かいました。

たしかに飼槽には餌の山がほとんどきれいに残っていました。
元気はなく、頭を少し下げている感じ。顔つきもあまりよくなく、「じとぉ…」っとした感じです。

体温は平熱で、呼吸器系の異常はありません。
便量は少ないものの、硬さや色、臭いに異常なし。
脱水やルーメン拍水音はないので急性アシドーシスはなさそうですね。
背弯姿勢や蹴腹はなし。直腸検査でも膀胱は張っておらず、陰毛結石もなし。念のため超音波検査も実施しましたが、きれいな膀胱粘膜を確認。膀胱破裂も起こしていません。
神経症状もなし。
四肢の浮腫もなし。

一体なんなのだ。
確定診断ができません。それに、単なる食滞にしては雰囲気が悪いです。

血液検査をしてみましょう。
重篤な疾患を抱えている可能性を伝え、当日は出荷規制のない強肝剤とビタミン剤のみ投与し、翌日の検査結果を待つことにしました。

つづく

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