(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第131話「帝王切開のトラウマ」

コラム一覧に戻る

2017年4月5日

さて、先日帝王切開となったケースについてご報告です。
「牛さんにもトラウマってあるんだ!」とはっとしたケースでした。

子牛の胎位は頭位上胎向(正常な姿勢)でしたが何より大きく、そして母牛の産道が残念ながら狭かったため帝王切開に変更し剃毛をすると…。

剃毛した皮膚にでこぼことくぼんでいる箇所を確認。
「あれ??」と思い確認すると前回の分娩が帝王切開であったことが発覚!
剃毛中から興奮度が著しく、とにかく作業がしづらいったらないのです。
これ、完全に前回の帝王切開のトラウマによる暴れっぷりですよね(汗)

左膁部切開(第一胃側を切って子宮にアプローチ)をしようとするのですが、
「させるもんか!させるもんかーー!!」と言わんばかりに母牛は左腹部を押し当ててきて体をねじります。戸田は押されてしまうのでとにかく手術が進みません。分娩室は狭いので、すぐに壁と母牛に挟まれてしまい身動きがとれなくなってしまうのです。

そこで、思い切って場所を変えてみました!

こちらなら、もし母牛がよってきても通路スペースがあるので戸田は逃げられます。それに母牛が寄ってきてもスペースに余裕があるのでオペを継続できるメリットもありました。

実際、場所を変えてからは興奮した母牛が寄ってきてもオペを中断しなくてもよくなりました。畜主におさえてもらいながら、ときおり暴れる母牛をなだめながら、とかくたいへんなオペでしたが無事にオペは終了。

「このままじゃ安全で円滑なオペができないな」と不安になったら思い切って場所を変えてみる!ってのは有効な手段だなと実感した次第であります

|