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ゲストのコラム
「舞子ぷらずま☆—牧場の嫁DAYS— 第5回」

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2009年7月21日

[マイスクリーム:仲間を探して<2>]
 
アイスクリーム作りも4年目を迎えようとしているこの夏、初めて「日本ジェラート協会」の講習会&懇親会に参加してきました。対面販売のアイスクリームショップが加盟店の多数を占めるこの会合、参加されるのは、イタリアのジェラテリアで修行した方や、製菓の知識も豊富なベテランさんなど、皆さんジェラートのプロフェッショナルばかり。イタリア風のふんだんなデコレーション、繊細なアイスケーキやパフェ風の愛らしいトッピングなどが提案されるこの会合において、対面販売の店舗を構えずにカップアイスだけをぼちぼち作っているうちのような事業所ははっきりと異色です。今までは加盟していたものの、気恥ずかしさと引け目もあって、熱心に参加していませんでした。例年は講習の終了次第そそくさと帰っていた私が、突然今年から二次会まで参戦し、ベテランの方たちとのおつきあいデビューを果たすというのは、嫁舞子としてはかなり思い切った行動だったわけですが、その行動の裏には、ここ数年来の主人の姿がありました。
主人はくろさわ牧場の和牛部門を担当しています。牧場自体は祖父の代からあるのですが、和牛部門は主人が就農したときに新設された部門。ある程度の基盤はあったものの、頭数を増やしつつ繁殖農家として牛さんたちを飼育していく過程でのハードルやスランプの数々、ひとり懊悩し、試行錯誤する様子を、私も垣間見てきました。そんなある日、「この本ええねん」と、知り合いのベテラン牛飼いさんが貸してくれた1冊の緑色の本が松本先生の『さらによくなる子牛生産』だったわけで、それを読んで問い合わせたらすぐ、ガタイのいい営業マンさんが「堀田で〜す」とまるでランプの中の大魔神のようにモクモクと現れ、そこから主人の「牛飼いの輪」は、見る間にどんどん広がっていきました。長いスランプや原因不明のトラブル、働いていくうえでのモチベーションの低下のような、「緊急事態ではないけれど実は毎日すごく困ること」を、電話やネット上での相談、視察や勉強会などで、なんとかやりくりしていきはじめた姿を見て、嫁として安心すると同時に、めきめきと知識をつけて楽しそうに仕事をする主人がうらやましくもありました。ただの同業者同士愚痴を分かちあうようなつながりではなく、力になりあえる仲間が欲しいと、初めて強く思ったのです。
結果として、プロのジェラート職人さんたちは、想像以上に優しく受け入れてくれました。アイスクリーム作りに専従しているわけではないことから、甘いところだらけで4年目にして不勉強は面目ないほど、失礼にあたるのではと心配していたのですが、ベテランの知恵とノウハウを惜しみなく与えてくれました。でも、ここからが正念場。専従じゃないうえビギナーな私は、人一倍アドバイスを必要としているわけで、でもいただくヒントは先輩たちの長大な時間と経験の結晶。教えてもらった知恵を無駄にしない努力と自発的な勉強で、この期待と厚意に応えて伸びなくては、認めてもらえないし申し訳ない。仲間といえば連帯感や一体感のようなものを連想して、そういうのが苦手な私はちょっと腰がひけていたのですが、いい仲間がもたらす最たるものは「個々の向上心」ではないかと思いました。

(つづく)
著:黒沢牧場 上芝舞子

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