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ゲストのコラム
「舞子ぷらずま☆—牧場の嫁DAYS— 第6回」

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2009年7月28日

[和牛と買うべき理由]
  
掲示板の松本先生の「いまの業界って…」のトピック。返信欄に色々書いていたら長大になってしまったので、コラムの話題とすることにしました。どうも不治の病「長文プラズマ」に罹患しているらしい嫁舞子です。

和牛の肉が売れない。格付けも厳しくなり、いいお肉でも値段がつかない。食の安心安全が叫ばれ、国産品への関心が高まっていると報道されるものの、スーパーなどでは格安の海外食品が多い現状…。
消費者の生活防衛意識が顕著になる中で、ユニクロをはじめ「安くてイイモノ」が流行し、勝ち組のビジネスモデルと注目されています。その大きな流れは食品分野も例外ではなく、大手スーパーは徹底した値下げで消費者にアピール。原油価格が急騰した去年の夏頃は、「値上げやむなし」のような風潮が少しありましたが、それが落ち着いた今となっては、「企業努力で値下げを」「この不景気に値上げなんて許せない」という消費者間の共通意識が強く根付いたように感じます。一方で、高価なお取り寄せグルメなどは、今なお好調です。普段の食材にはお財布の紐をかたく、珍しいもの、流行りものには、取り寄せて送料がかかってでも食べてみたい…。
不景気とはいえ、衣食足りている日本の消費者。先行きに不安がある今、無駄遣いをしたくない意識は高くなっている反面、好景気の時より強く「買うべきもの」を求めているように感じます。購買欲は本能とは言わないまでも、快楽の一手段。「買った!」という満足は、手っ取り早い幸せです。それが不景気で制限されることが多い今、「ただ欲しい」に罪悪感を覚える人が多く、買い物に理由を求めるのではないでしょうか。「自分へのご褒美にブランドバッグ」「限定100個のスイーツ」「玉子ご飯専用の極上醤油」「行列ができる名店のラーメン」「電気代節約のためのエコ替え」…、「買うべき理由」を上手に作ることができた商品が売れています。これは物へのニーズの掘り起こしではなく、購買欲というニーズに対してのソリューション=買うべき理由がまずあって、それらに各商品を結び付けているのだと考えます。
流動的に見える消費者ですが、実際としては、「不景気で毎日の食材を割高の国産食材に変える余裕はない。とはいえ、自己責任などという世知辛い言葉が横行するなかで食品偽装も多発し、食の安全安心には非常に敏感にならざるを得ない。さらに自給率の低下や第一次産業の衰退などの現状を見聞きして憂うものの、自分の生活で手一杯だし、買い物くらい気楽にいい気分でしたい…」というところでは。そして嫁舞子もそんなひとりでもあります。
和牛肉に、この「買うべき理由」を結びつけられないものでしょうか。不景気のただ中、価格の壁は、美味しさだけでは超えにくい。来週も牧場の嫁&主婦の目線からこの点を一生懸命考えてみたいと思います。

(つづく)
著:黒沢牧場 上芝舞子

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