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ゲストのコラム
「舞子ぷらずま☆—牧場の嫁DAYS— 第2回」

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2009年6月30日

[マイスクリーム:アイスクリームことはじめ]
 
「黒沢牧場の嫁です、アイスクリームを作っています」と私が自己紹介をしますと、和歌山では「あで、くろさわの“クリーム”かえ。うちよう食べら、美味しいわして」という言葉が、9割の確率で返ってきます。
あ、コレ意味分かりますか?「まぁ、くろさわ牧場のクリームね。私よく食べるわよ、美味しいわよねぇ」です、えらく印象が違いますが。本当に、年配の方の和歌山弁は、こんな素朴な感じなんです。大阪生まれの奈良育ち、関西弁ネイティヴの嫁舞子は、嫁ぐにあたって、言葉の心配はまったくしていなかったのですが、和歌山弁は想像以上の難解さ。年配の方が話す言葉はまるで異国の響きで、思わぬところで苦労しました。
で、話をこの“クリーム”に戻すと、黒沢牧場の場合、このお客様の言葉はほぼ100%ソフトクリームのことを指します。ありがたいことに、地元では「くろさわ牧場のソフトクリーム」は超有名。実は私も、学生の頃、当時の彼と和歌山にドライブに来て、くろさわ牧場のソフトクリームを食べ、「おいし〜い☆」と、計算づくのハニカミ笑顔で首をかしげて見せたことを覚えています(汗)。その彼とはあっけなく別れ、数年後そのソフトクリーム屋さんに嫁ぐとは。これも運命の出会い…というか、「え、運命そっち!?」って感じです。
が、しかし(スミマセン、今回は脱線だらけです)、ソフトクリームはいくら美味しかったところで、1人で2つ食べてくださるお客様は、ほぼいません。お持ち帰りもお取り寄せもできません。つまり、最大1人1個、その場でしか食べられない。それがご当地的魅力でもあるのですが、事業者側からすると単価の安い商品なのに、販売個数に限界があるのがネックでした。そこで、主人母が「嫁もきたことだし、女性陣で、お持ち帰り用アイスクリームを作りましょう☆」と発案、アイスクリームが牧場の事業に加わったのです。
アイスクリームは、洋菓子とは違い、製菓の知識がなくても、機械のメーカーさんで講習を受ければ作れるようになります、…なるんです、一応。アイスクリーム作りっておいしそうだし楽しそう♪なんてカンタンに思っていた、まだひよっこ嫁だった嫁舞子。ここから「お商売」と「食品製造」の、厳しさとやりがいが相半ばする、前進あるのみの道へ、踏み込んでゆくことになるのでした。

(つづく)
著:黒沢牧場 上芝舞子

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