[ひょんなこと] 「ひょんなことから〜〜な状況に!」といったマンガのあらすじ紹介などを読むたびに、“説明もええかげんなら、流されやすい主人公もええかげんやわ!”と不満だったガラスの十代・少女時代。飾りでもいいから輝きが欲しい三十路の今、「ひょんなこと」としか言いようがない流れの存在を身をもって理解しつつ、このたび“ひょんなこと”からコラムを担当することになりました、和歌山から『黒沢牧場』の嫁・上芝舞子と申します。 思えば、牧場に嫁いだのも、そしてその後も、人生って意外と「ひょんなこと」だらけ。新興住宅地で典型的サラリーマンの娘として育ち、「午後から出勤、徹夜上等!」の雑誌編集者時代を経て、自営業のことも牛のこともよく知らないまま、牧場ワールドへ飛び込みました。大小のカルチャーショックはあったものの、田舎暮らしは基本的に肌にあっているようで、今ではすっかり和歌山女、時々和歌山弁も口をつくこのごろです。フリーライターとして細々と書き続けている傍ら、牧場での担当は、搾りたての生乳を使用してのアイスクリーム作り。実は、製菓も調理もぜんぜん興味がなかったのですが、主人の母のアイデアに巻き込まれる形で“手作りアイスクリームの道”へ…。 大人になると、「ひょんなこと」の形をとって現れる、他動的な人生の岐路が、たくさんあるように思います。自らの夢に向かって信じる道をまっすぐに突き進むのもひとつ、でも、あちこちの「ひょんなこと」に首を突っ込んでみるのも、嫁的には面白い生き方か…!?なんて思いつつある、31歳の夏なのです。
黒沢牧場は和歌山の海南市にあります。牧場が位置するのは海抜500mほどの高原で、敷地面積は100ha、30haの放牧地に、牛さんたちを周年・山地放牧しています。酪農部門には、ホルスタイン約60頭とジャージーが数頭。地元では、この生乳を使ったソフトクリームがロングセラーの人気です。主人は和牛の繁殖部門を担当、現在35頭のお母さん牛と、むくむくの和牛仔牛ちゃん達20頭を育てています。子牛達は主人を見ると超興奮、甘えた鳴き声を出しますが、私が近づくと「you誰?ってかエサくれないわけ?」というような計算づくの目で見ます。むむ。 和歌山は牛の飼育頭数がとても少ない県。子牛市は3か月に1度の開催、出頭数も70程度。そんななか、和牛農家は熊野牛のブランド化を目指して奮闘中です。子牛市の日には、主人を含め青年部のメンバーは、熊野牛のラブリーなイラストのつなぎで参加します。 そんなまきばの日々、嫁舞子のぷらずま目線で、おっかなびっくり牛さん観察やアイスクリーム作りのことを綴っていきます。どうぞよろしくお願いします。
(つづく) 著:黒沢牧場 上芝舞子 |