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「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス−7 「お産後の子牛飼養管理」」

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2009年5月26日

 産まれた直後の和子牛は、本当に弱い生き物です。ホルスタインなら45kgくらいで産まれてくるのに、和子牛は30kg程度しかありません。早産だったりすると、20kgそこそこしか無い場合もあります。サラブレッドなら母親の体重が500kg程度で、子馬は55kgくらいで産まれてきます。人間は母親の体重が50kgで3,000gの赤ちゃんを出産し、生まれ立ての赤ちゃんは非常にか弱い存在です。和子牛はどちらかというと、人間の赤ちゃんのようにひ弱な状態で産まれて来ていると言えます。それだけに産まれて1ヶ月位は下痢や風邪を引いた時のダメージが大きく、生死に関わる状態に陥ります。
 それに較べ最近の気高の血統は、生時体重で50kg近いものもおり、それらは非常に丈夫で安心して見ていられます。生時体重が大きいとその後の発育が良いことは、試験場の成績からも明らかになっており、大きく産ませるための分娩前の母牛の増し飼いなどは取り組む必要のある技術だと言えます。
 また、産まれてからの子牛の管理としては、なんと言っても栄養を充足させてあげることが大事です。母乳で育てている場合は、おっぱいが不足することもあるので、早くからスターターに慣れさせ、不足分をスターターで栄養補給することも必要です。またスターターは胃袋の絨毛を発達させる効果もあるので、消化力の強い胃袋を作る意味からも非常に大切です。
 子牛にとって寒さは大敵です。ちょっとした寒さで体力を消耗し、軽い下痢でも重症になってしまいます。保温箱や保温灯のような寒い時に暖まることの出来る設備を、別飼い施設として設置しておくと安心です。和子牛は、人の赤ちゃんと同じ感覚で扱うことが丈夫に育てるコツのような気がします。

(つづく)
著:十勝農業改良普及センター十勝北部支所 出雲将之

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