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「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス−5 「周産期に注意−分娩前の親牛管理」」

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2009年5月12日

 周産期とは妊娠後期から新生児早期までのお産にまつわる時期を一括した概念をいい、この時期に母体、胎児、新生児を総合的に管理して母と子の健康を守るのが周産期医療です。出産してくる胎児とその母親を守ることの重要性から、分娩前後のこの時期を特に周産期と呼び、人間の医療分野では手厚い保護を行えるよう体制がとられています。
 牛の世界でもこの時期は非常に重要です。黒毛和牛繁殖牛は子牛を生産し、初めて経営が成り立ちます。黒毛の場合は妊娠したからといって、母子手帳を発行し医療機関や保健所の管理下におかれるわけではありません。母牛の管理は、全て飼い主の判断に任されます。その分飼い主は牛の生理生態を熟知し、その時期にあった栄養管理を行う必要があります。
 特に平茂勝の血が濃いと胎児が大きくなりがちで、その発育に見合う栄養を妊娠末期に補給してあげなければいけません。改良が進んだ今の黒毛和牛を、昔の感覚で飼育するのは母体と産まれてくる子牛に無理が出ます。
 私の妻の時を振り返ると、つわりが治まりお産が近くなるに従って、普段小食だった彼女が、どこに入るのかと思うくらい食欲旺盛になったことを思い出します。2人分食べていたとは言いませんが、1.5人分は食べていたと思います。人間の場合食べたいときに食べられますが、牛さんの場合は人間の管理下に置かれているため、与えられた物しか食べることが出来ません。与えすぎてもだめですが、足りないと元気に子牛を生むことが出来ません。人間の場合お産が近くなり、その時太っているからと言って急にダイエットする人はいませんよね。それと同じで、妊娠末期(分娩前2ヶ月)はボディーコンディションをいじらず、急激に成長する胎児の発育を促すような飼養管理が必要です。

つづく
著:十勝農業改良普及センター十勝北部支所 出雲将之

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