(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
ゲストのコラム
「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス−4 「牛と対話しよう」」

コラム一覧に戻る

2009年4月28日

 肉牛は言葉を話しませんから、「うんち」や「歩き方」「息づかい」「牛の挙動」など、飼い主が五感を駆使して健康状態を見てあげなければいけません。普段から牛をよく観察していなければ、その状態は把握できません。西洋人のホルスタインと違って、和牛は日本人同様シャイでストレスに弱く、自己主張もあまりしない傾向にあります。
 役牛として田起こしをさせていた頃は、毎日和牛と接していてその健康状態もつぶさに感じ取れたのでしょう(私の奈良の実家でも戦前は役牛として使われていました)が、頭数が多くなるとなかなか目が行き届かないのが現実です。意識して牛を見る時間を作ってください。繁殖牛の発情発見はもちろんのこと、子牛の栄養不足や尿石、下痢などは日頃の観察が早期発見につながり、早めの対応に結びつきます。
 先日私の担当地域で松本先生をお招きして、バーンミーティングを実施しました。子牛の「隠れ肺炎」や「軽い尿石」「骨軟症」「ビタミンA欠」をすぐに発見し、栄養不足や飼養管理上の問題点を指摘されました。さすが松本先生と思いましたが、同時に普段から牛を見る目を養うことの重要性について気づかされました。どこをどう見るのか、観察のポイントをこういった研修会で修得することも大切です。
 重症になってからでは発育に大きく影響しますが、早い段階だとほとんど問題にならない程度で済みます。ビタミンや生菌剤、ワクチンの投与によって子牛が健康的に育ってくれるのであれば、必要なところにはお金をかけてあげることも大事です。経営が厳しいからといって1万円の経費を惜しんで、売る時に5万円安ければ何もなりません。

(つづく)
著:十勝農業改良普及センター十勝北部支所 出雲将之

|